第7話 改めて確認


 「これってさぁ。俺のスキルを強化するのに魔石を使うけど、みんなそうなの? それなら間違いなく魔石の取り合いになるけど」


 とりあえず強くなるかーと思って、ステータスボードを眺める。


 俺の持ってる『アテナ』『ソロモン』『アイテムボックス』『ショップ』ってスキルは、強化しようにも魔石が必要だ。『ドロップ確率上昇』は強化のしようがないみたいだけど。


 『アテナ』は結界を張る能力っぽいけど、結界の大きさ、強度はまだまだいまいち。多分スキルのレベルが上がると諸々が強化されると思う。


 『ソロモン』は悪魔を召喚するのに贄として魔石が必要だし、召喚した悪魔が本来の力を取り戻す為にも更に追加で魔石が必要。


 『アイテムボックス』も『アテナ』同様に諸々が強化されるんだろう。収納量とか時間経過とか。


 『ショップ』は魔石を払って、アイテムを買える能力だ。見た感じ日用品から武器防具、各種魔物素材やファンタジーアイテムがラインナップにある。魔道具とかポーションとかね。


 正直どれもこれも夢のあるスキル達だとは思う。一人で生きて行くには申し分ないスキル構成だろう。


 身の安全は『アテナ』の結界や、召喚した悪魔に守ってもらえば良いし、必要なものは『ショップ』で買って『アイテムボックス』に収納もしておける。


 魔石があればだけど。


 それにダラダラ過ごす訳にはいかない理由がある。『ソロモン』の悪魔達を完全な状態で復活させないといけない契約をいつの間にか結ばれていたから…。


 それが悪魔達が俺に力を貸す条件らしい。俺がその契約履行しようとしてる限り、悪魔達は力を貸してくれる。ダラダラ過ごしてたら、今は献身的なお世話をしてくれるアスモデウスも力を貸してくれなくなるだろう。


 そんな説明どこにも無かったと思うんだけどなぁ…。もしかしてゲームの説明にあったのかしらん。


 それはさておき。


 「いえ。通常のスキルはゲームで言うところの熟練度システムの様なものですね。使えば使うほど成長します。勿論成長するにつれて、熟練度は上がりにくくなりますが。しかし【ユニークスキル】は別です」


 電気ガス水道が無いから、どこからか調達したガスコンロを使って飯を作ってくれてるアスモデウスに訊ねる。


 闇魔法で格好をメイド服にしてやるっていうガチっぷり。メイド服がガチなのかどうかは、人によるかもしれないけど、俺は眼福だからオッケーです。


 「【ユニークスキル】は他の通常スキルとは一線を画す性能を誇る代わりに、成長させるために多大な対価--つまり大量の魔石を要求されます」


 「ふむふむ」


 「【ユニークスキル】は神の名前を冠するのが一般的ですね。遥人様の『アテナ』のように」


 「『ソロモン』は神様だっけ? どっかの王様だったような気がするけど」


 俺が『ソロモン』について知ってる事なんて、どっかの王様だって事と、悪魔を封印したって事、後はすんごいハーレムを築いてたって事ぐらいだ。この話も歴史で知ったとかじゃなくて、なんかのゲームかラノベで知った事だから、本当か分からん。


 こういう現象あるよね。

 ラノベとかゲームで歴史にまつわる系を読んだり、プレイしたりすると色々ごっちゃになって本当の事が良く分からなくなるやつ。


 「歴史上の偉人がそういうスキル名になってる事もあります。【ユニークスキル】を得られる人間は稀ですが、将来的に魔石の取り合いになる可能性はありますね。あと【スペシャル】のスキルについては不明です。【ユニークスキル】は唯一無二ですが【スペシャル】は他にも同様の所持者がいるかもしれませんね」


 「なるほどねぇ」


 大多数の一般人は今のところ魔石なんて無用の長物だけど、必要とする人もいる訳だ。


 そう言えば、ゲームでスキルのリセマラをしてた時に『ゼウス』とかあったような。他の人にそういうスキル持ちの人がいるかもしれないって事か。


 『ゼウス』って雷系かなぁ。

 良いなぁ、かっこいい。


 「とりあえず魔石を回収するシステムが必要か。俺達だけで地道に魔物を倒すのにも限度がある」


 冒険者ギルド的な。

 魔石を買い取って、お金を払う。

 お金の使い道は俺が『ショップ』で用意出来るしな。


 「まっ、そんなのは政府がやるか。今は避難活動やらで忙しいだろうけど、そのうち何かしら対策をして魔物をなんとかしようとするだろ。やっぱり地道にやるしかないのかね」


 「そこまで時間があれば良いですがね」


 「どゆこと?」


 俺が個人でやる前に、政府が魔物をなんとかする対策を打ち出すはずだ。そう思って、他にどうやって効率よく魔石を回収出来るシステムを作るか考えようとしたら、アスモデウスが出来上がった料理を持って来ながら、不穏な事を言う。


 「今、ダンジョンから溢れてきてる魔物は、遥人様に分かりやすく言えばG級ダンジョンの魔物です。G級ダンジョンは魔物のキャパが少なく、すぐに溢れて来てしまいますからね。しかし、時間が経つにつれてF級E級のダンジョンからも魔物が溢れてきます。Gランクの魔物の対応に追われてるようじゃ、この先崩壊するのは目に見えてますよ」


 「Gランクの魔物の強さってどれくらい? あ、美味っ」


 アスモデウスが作ってくれたお鍋をいただきますして食べながら話す。


 「そうですね…。プロスポーツ選手と同等の身体能力を持ってるぐらいでしょうか。知能も低いので、銃火器で一掃出来るレベルでしょう。ランクが上がるにつれて銃火器が効かなくなり、魔物も知能が上がりスキルを使ってきたりします。今の人類の最高兵器を使ってもC〜Dランクが限界ではないでしょうか」


 「ふーん。やべぇじゃん。………いや、やべぇじゃん」


 軽く流そうとしたけど、流せるレベルの話じゃなかった。最高ランクがどれぐらいか知らんが、今のままじゃ人類詰んでるよね?


 「人間が適応するのが先か、魔物に滅ぼされるのが先か。まあ、ほぼ100%後者ですね。こういう時にも一致団結出来ずに、目先の利益を追おうとするのが人間という種族ですから。遥人様も崩壊した後にどうするかというのを考えておいた方が建設的ですよ」

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