第5話 説明


 目が覚めたら目の前に絶世の美女がいたでござる。


 「…………」


 「おはようございます、召喚主様」


 「…………」


 「失礼します。ゆっくりとお飲み下さい」


 起きたら目の前に絶世の美女がいる。なんで俺の家にとか、一体誰ですかとか、色々考える事はあったけど、とりあえず結婚を前提にお付き合いをお願いするかと、声を出そうとしたが喉がカッスカスで声が出ない。


 パクパクと口を魚みたいに動かすのみ。


 てか、今気付いたけど身体も動かん。

 一体何があった? まさか誘拐? 俺にそんな価値はないと思うんだけど…。


 ………まあ、こんな美女に介抱されるなら良いか。


 俺はそんな事を思いながら、美女が飲ませてくれるぬるい水をゆっくりと飲むのであった。




 「そのままの状態でお聞き下さい」


 お水を飲ませてもらってしばらく。

 目の前の美女の身体が急に黒いモヤで覆われて姿が変わる。


 何これ? 手品? 全然意味が分からないんだけど。


 俺の混乱をよそに、世界に存在する全男性が望んだ性欲の権化みたいな格好になった美女。紫色の髪の毛になって、頭には捻れた角がある。そして隠してる意味があるのか分からないぐらい薄い布地を身に纏った美女は、自己紹介を始めた。


 「初めまして召喚主様。私の名前はアスモデウス。以後よろしくお願い致します」


 「…………? あ!!」


 混乱しながらもようやく俺は思い出した。

 カッスカスの声で大声を上げて、俺が意識を失う前にやった事を思い出す。


 そうだそうだ。

 ステータスなんて摩訶不思議な能力が使えるようになって、ゲームで課金した能力なんかも付与されたりしてて、びっくりしてたんだ。


 で、とりあえず何も考えずに初回無料の言葉に釣られてアスモデウスを召喚した。そして気付いたら今である。


 「召喚主様は私の召喚から約三ヶ月間眠りについておられました。全魔力、それに生命力をも費やしての召喚です。無茶をなさいましたね。私が精気を送らなければ、更に目覚めは遅れていたでしょう」


 俺はベッドに寝転びながらぺこりと美女に、アスモデウスに頭を下げる。とりあえず形だけの謝罪である。


 だってだって初回無料って書いたあったんだもん。召喚にまつわる何もかもを面倒見てくれると思うじゃんか。


 召喚に魔力やらがいるのも知らなかったし、てっきり魔石だけかと。ステータスの説明が不十分なのが悪いと思います。


 俺が内心でぐちぐち言ってると、しかし良い事もありましたとアスモデウスは言う。


 「召喚主様の全魔力、ギリギリ生命活動が維持出来る生命力を使っても、私を召喚する贄は足りませんでした。スキル側が気を利かせたたのか、足りなかった魔力は分割払いのような扱いに。結果、召喚主様は魔力が回復する度にスキルに吸い取られ、膨大な魔力を得る事になりました。魔力は限界値まで使い切ってから回復すると、上限が増えますので」


 あー、ラノベとかでよくある設定ね。

 誰でもお手軽に魔力を増やせるのに、何故か誰も気付かずにやってないやつ。絶対に誰かしら気付きそうなもんだけど。


 「意識を失っていて良かったですね。魔力を使い切った時はかなりの苦痛を伴います。分かってても敬遠する程度には辛い痛みです。具体的には金的を思いっ切りハンマーで潰されたような痛みに匹敵します」


 ひょえ…。

 想像したらヒュンってなった。

 そんなの誰もやる訳ないじゃん…。


 意識がなくて良かった…。

 ってか、三ヶ月、回復する度に俺にその痛みが襲って来てた訳でしょ? 俺、よく目覚めなかったな…。


 「召喚主様が意識を失ってる三ヶ月で、世界は色々変わってしまいました」


 俺が冷や汗を流してる間にもアスモデウスの説明は続く。


 そういえばそうだった。

 なんか俺がノリで買ったクソゲーのあらすじ通りなら、タイトル通り終末世界みたいな感じになるらしいけど…。


 一体どうなったんだ?


 「世界各地に出現したダンジョンから魔物が溢れ出し、今では少し歩けばそこら中に魔物が存在します」


 やっぱり…。

 魔物がいるのか…。

 いよいよやばいじゃん。


 「警察消防や自衛隊が出動して、事態の解決を図っていますが、全く手が足りてません。更に、急に超常の力を手にした一般人の様々な暴挙。今はまだ水際で耐えれていますが、崩壊するのは時間の問題でしょう。これは日本に限らず、どの世界でも同じようですね」


 おおふ…。

 マジでどうしたら良いんだ?

 俺って、今、悠長に寝てるけど大丈夫なのか? 何をしたら良いか全然分からないんだけど。


 「さて。ここ三ヶ月にあった事をざっと説明しましたが、ここからは私達の話です」


 ここまで簡潔に分かりやすく説明してくれたアスモデウスの雰囲気が少し変わる。


 「ご存知か分かりませんが、私は悪魔です。古今東西、悪魔を召喚するには対価が必要ですが、既に対価は支払われています」


 ……? 対価? ああ、魔力の事かな? 次から召喚するには魔石も必要になるみたいだけど。それの事を言ってるのかな?


 「私達ソロモン72柱全悪魔の完全復活。長い旅路になりますが、どうぞよろしくお願い致します」


 うんうん。意味が分からないね。

 これまでは分かりやすい説明だったのに、急に話が飛ぶじゃんか。これも分かりやすく説明してよ。

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