第3話 南方より弾を込めて(3)

伝令兵からの報告――第2首都にて待機中であった部隊は半壊、師団長や参謀といった上級将校等が多数死亡。戦車や装甲車、自走砲といった兵器類も多く損失、作戦の変更を余儀なくされたし――



 膠着状態が続いて2ヶ月が経過し、銃弾1発すら飛び交わなくなっていた。戦場には糸を張り詰めたかのようなピンッとした緊張感が、南国にふさわしくない冷たい空気として両国の陣営に漂っていた。


「上の方はどうこの状態を突破するのですかねぇ。」


 彦太が煙草を口に咥えて手を懐に入れ、ライターを探しながら慶一に語りかけると慶一にルガーの銃口を向けられた。


「……。」


 気がたっているのか殺気のこもった沈黙でルガー越しで語った。彦太は引きつった笑顔を見せながら両手を挙げて慶一を見上げる形で座り込んだ。


「分かりました、言いませんっ、言いませんからぁ。」


 すると慶一が口を開いた。


「……これで火をつけたら一生静かになるよな…。」


 無表情で声にもあまり抑揚がないがその言葉に冗談といったものが感じられなかった。これに対し彦太は涙目になりながら銃口と慶一の目を何度も目で往復して様子を伺うしかなかった。


「……冗談だ。」


 沈黙の後にルガーを下げながら彦太に手を差し伸べる。


「自分の持ち場に戻ります!し、失礼しました。」


 そう言うと彦太は駆け足で持ち場へと戻って行った。




「おいお前ら、見てたなら止めるなりなんなりしろよ。」


 彦太は持ち場に戻る途中でその様子を見ていた部下の一人に声を掛ける。


「んなことするなら1個小隊がなくなる腹づもりで行かねぇと駄目ですよ。」


 軽口半分本気半分といった具合に彦太に応えた。




あとがき


 お久しぶりです、HiTです。 

 ここ最近体調を崩したりテスト期間であったりと執筆活動がなかなかできませんでした。

 申し訳ございません。この話も1000文字行ってるか行ってないかのギリギリですいません。

 次回は絶対に日曜日に更新します。




    

 


        

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矢弾の軌道 HiT @20090106

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