第8話 エピローグ

僕と紫音はあの事件の後、2日ほど六花荘でのんびり過ごして東京に戻ってきた。

その日、岸くんがBAR KINGにやってきた。


「この前はありがとな。」

「岸くん、いらっしゃい。事件は片付いたの?」

紫音がビールを出しながら言った。

「うん。今日検察に起訴したよ。」

「やっぱり太田さんの息子さんの犯行?」

僕のほうを向いた岸くんが首を縦に振ってニヤッと笑った。


「今回は本当助かったよ。まぁ、休暇は無くなっちゃったけどな。

堀田さん、太田の息子の矛盾に気づいててさ、流石だよな。


太田の息子、杉田に脅されてた様なんだ。

かなりの額を強請られて、実家の資産を当てにしようと実家に行った。

杉田は夏菜ちゃんが太田家に出入りしているのを知っていて太田孝一の実家だと知っていたようなんだ。

もしかしたら、実家に来るんじゃないかと思って見張っていたようなんだよ。

で、鉢合わせしたんだな。

太田は杉田に一度実家には資産が残ってるって言ったことがあったようなんだ。

で、あの日太田と杉田がその金庫を巡って争って、はずみで杉田の後頭部を金庫で殴ってしまった。

金庫はなぜか太田のおばあちゃんが息子から奪い取って窓から投げたらしい。その現場に常田が来たってわけだよ。」


「すごい偶然が重なるもんだな。」

「紫音、現実に起こる事件なんてもんは、本当に偶然の産物なものが多いんだよ。ミステリ小説なんかで出てくるトリックなんてもんは、物語の中の作り話だよ。」

「あ、それ、堀田さんの受け売りでしょ?」

僕が突っ込んだら、岸くんはへへへといつものように笑った。


「で、堀田さんは何を見抜いてたの?」

僕が聞いた。

「最初、太田孝一は、数年ぶりに実家に帰ってきて遺体を発見したって言ったんだ。なのに数か月前から太田時江さんに認知症が出ているといっていた。まずそこに矛盾を見つけたんだ。

しかも、凶器から決定的な指紋が出てきた。

それで、堀田さんは太田孝一を落としたんだよ。」

「小さなほころびを見つけたってことか。」

紫音がグラスを拭きながら感心した声で言う。

「そうなんだよ。今回の取り調べの堀田さん。カッコよかったぞ。お前たちにも見せたかったわ。」

岸くんは誇らしげに胸を張っていった。まるで自分の手柄のように。


その夜は、3人で遅くまで飲んだ。

最後、酔いつぶれた岸くんがずっと、

「今度は俺も夏休み満喫するんだーーーーー!!」

と言っていた。


今度は3人で何処に行こうか。岸くんも次は参加できるといいな。

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六花荘の夏休み KPenguin5 (筆吟🐧) @Aipenguin

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