第5話 魔境の正体

「興味深い絵柄だな」

「ここは何なの? あの人たちは一体?」


 詳細は不明だが心当たりはある。それはザーラとポーラだ。


 彼女らは先史文明の遺産。CPUユニットとして疑似霊魂が封入されている特別なモデルだ。数百年前までは、その疑似霊魂を封入したロボット兵器や戦車、戦闘機も存在していた。疑似霊魂の多くは女性であり、彼女達に性的興奮を与える事で隷属させ戦わせていたのだ。


 しかし、中には少数だが本物の人間が封入されていた例があると聞いた。それは戦闘単位の中核部分、指揮系統の中枢部になる。


「マスター……助けて下さい」


 先行していたドーラの声だ。およそ100メートル先にいる黒い巨大な蜘蛛。その腹から無数に伸びている白い触手に絡みつかれた彼女は身動きが取れない状態だった。


「残念だけど、精は私が貰うよ」


 その大蜘蛛が喋った。頭部の口が開き、その舌の上に座っている全裸の女がニヤリと笑った。


 半透明の疑似霊魂とセックスしていた月城は大蜘蛛の白い触手に絡め取られ、一気に大蜘蛛の口へと運ばれた。蜘蛛の女は月城の起立した一物を撫でながら彼に跨った。


「ああ。本物の男。本物の精液。これを喰らえば私は何度でも蘇る。ふははははは」


 蜘蛛の女が高らかに笑う。女の激しい腰の動きに合わせ月城も腰を突きあげている。


「いいわ。もっと、もっと突きあげて。そして何回も何回も出して。イってえ」


 蜘蛛の女は半狂乱となって泣き叫んでいる。そして、月城に群がっていた女たちはいつの間にか戦車を降りていたベルタへと向かっていた。


「ベルタ。こっちへ戻れ」

「嫌よ。譲二を返して」


 ベルタは泣き叫びながら大蜘蛛へ向かって拳銃を乱射していたのだが、女たちに囲まれ押し倒された。性の快楽を得る為なら男でも女でもいいらしい。


 私は上部ハッチを締めて戦車内の車長席に座った。


「ポーラ。マルズバーンと接続しろ。あの大蜘蛛を討ってザーラを救助する」

「よろしいのですか? この車両、元に戻せなくなりますよ」

「構わん」

「月城大尉とベルタさんは?」

「大蜘蛛の後だ」

「了解しました。接続開始します」


 ボッボッボッと息継ぎをした後、マルズバーンのタービンエンジンが勢い良く回り始めた。そしてもメインモニターを始め、各計器に火が灯った。


 モニターは中央にあの大蜘蛛を捉えていた。口の中で女と激しく交わっている月城がいた。そして、大蜘蛛の周囲には破壊されて錆びついていた戦車やロボットが集まって来ていた。それらはゆっくりと私たちに向かって迫って来ていた。


【後編へ続く】

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鉄錆の魔境【前編】 暗黒星雲 @darknebula

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