第3話 深夜の追跡

 私は早速、オートマタのザーラとポーラに月城の監視をさせた。彼女達は戦闘用なのだが、外見は人間そっくりなので諜報要員としても役立つ。


 月城の仕事ぶりは真面目で何も問題はないように思えた。また、彼の自室も調べさせたのだが、手掛かりになるようなものは何もなかった。


「マスター。時間です」

「ポーラか? ザーラはどうした?」

「闇に乗じて追跡を開始しました」

「徒歩か」

「はい」


 少しうたた寝をしていたようだ。月城は既に基地を出ていてザーラは徒歩で追跡を開始していた。彼女の肌は暗闇で目立たない為、深夜の探索には適している。私はポーラと共に格納庫へと向かった。


「戦車の準備は?」

「出来ております。操縦席に整備士が座っているのですが」

「ああ、今夜は彼女に任せる」

「わかりました」


 私とポーラは上部のハッチから戦車内に乗り込んだ。

 私は中央右よりの車長席、ポーラはやや前より左側の砲手席に座る。その右側の操縦席には整備士のベルタ・ルーマンが既に座っていた。


「ベルタ。操縦はできるな」

「はい」

「直ぐに出せ。回転は抑えて低騒音走行を心がけろ」

「わかりました」


 ベルタの操縦でマルズバーンが動き始めた。


「月城の位置は?」

「ザーラの前方200メートル。画像出します」


 荒く揺れている画像はザーラの目と同調させているからだ。しかし、月城の背をしっかりと捉えている。彼は三輪のバギーに跨って未舗装路を疾駆しているのだが、ザーラの追跡には気付いていない。


 マルズバーンは基地のゲートをくぐり月城の後を追う。


「既に15キロほど離されました。速度はこのままで?」

「通常走行のまま速度を上げて距離を詰めろ」

「了解」


 キュイーンというタービン音が高鳴りマルズバーンが加速し始めた。キャタピラ走行では時速70キロまで出せる。月城のバギーは時速50キロほどで走行しているので、小一時間で追いつく計算になる。目的地は月城の現在位置からは40キロほど先。砂漠の中の岩がゴロゴロ転がっている一帯だ。


 月城はやや速度を落としてから、道路から荒地へとバギーを進めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る