訪問介護士
rainy
訪問介護士
キュクロプスに凝視されつつ掃除する一人暮らしのハルさんの部屋
本棚の博多人形脇に寄せヘミングウェイにはたきをかける
鳩さんは羽で私は脚で来た 五月の朝に ハルさんの部屋
PG12指定のような部屋の前で先輩我を振り返り見る
膝小僧を足裏にして立ち尽くし見詰める壁のスパイダー模様
ああここはアジアの底だ床板に足跡、車輪の跡、犬の糞
動物園の鳥かごみたいなゴミ捨て場にてやかましく眠るゴミ達
扉ごと違う匂いを詰め込んで五月の空に伸びゆくアパート
三人の夜のごはんを作り終え杖つき帰る老いたヘルパー
中華鍋振るう張くん男なら出来て当然という顔をして
盲目のあなたは厨で手を伸ばす五月の光を掴むが如く
我が舌は鋭い彫刻刀になる見えないあなたと川辺を歩いて
ジャージにて広島の街を闊歩するこの街じゅうが仕事場なれば
時給出ぬ移動時間に砂利を見てアンテナを見て空を見上げる
訪問の間にかじるアンパンは愛と勇気が少し足りない
チヨさんが猫匿ってると誰一人密告はせぬまろやかな世界
ミャオンミャオン訪問先のチヨさんの猫に懐かれ二年目の春
実の祖母よりも濃紺色の関係のシゲコさんの葬儀に出られぬ
車いす押す者が最初に気付くだろう世界終末の大地のひび割れ
フロンティアで丸太一本切るように目の前の人のオムツを替える
訪問介護士 rainy @tosihisa
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