空を見上げてごらん。ほら、ペンギンが降りてくるよ。

 ペンギン・マスドライバー。それは、命をつなぐ手段であり、それに乗り込むペンギンたちは、まさに希望の星なのです。電磁式カタパルトなんて、ロマンの塊でしかありません。ロマン毎、宇宙空間へ射出してしまいましょう。
 解凍されながら、ぐんぐんと進んでいく母親ペンギンたち。射出の成功を喜んでばかりもいられません。天敵がすぐそこまで迫っています。真っ先に栄養を取らないといけないのに、真っ先に天敵に追われるなんて、災難以外の何物でもありません。何物でも良いから早く食べ物にありついてほしいと心から願いつつ、読み進めます。
 お、第二射はとても心強い護衛やペンギンがついているのですね。これは少し安心できるか……。
 そして、しこたま栄養を蓄えた母親ペンギンたちに待ち受ける更なる試練、大気圏再突入。最初から最後まで命がけの旅は続きます。あぁ、一羽が星に……。でもそれを悲しんでいる暇などきっとありはしないのでしょう。明日……どころか、気を抜けば、次は我が身かもしれないのですから。
 人間の世界には「男は船 女は港」なんて言葉がありますが、船から戻ってきた女(母親ペンギン)から港で待っていた男(父親ペンギン)とバトンタッチ。なぜでしょう、船から戻ってきた母親ペンギンよりも、港でその帰りを待っていた父親ペンギンのほうがげっそりして見えます……(
 そして、そのままカタパルトへセット! 射出!
 春になるころには、ほとんどのペンギンが宇宙へ飛び出し、残ったのは見送る側の工兵ペンギンのみ。
 子ペンギンたちにとって宇宙は未知で満ち満ちています。一応断っておきますが、「未知」と「満ち」をかけた洒落ではありませんよ?
 安全を選ぶなら、地球。もしかすると、そのうち南極から中継で、ペンギン・マスドライバーから射出されるペンギンの姿を見ることが叶う日もそう遠くはないのかもしれません。ペンギンたちからすれば、・8・星と宇宙がそんなに遠くないと感じているように。