めちゃくちゃ霊感あるのに自覚がない父親の話
西村与経
ひとみさん
横浜にある仏教慈徳学園っていう、非行少年を受け入れて一緒に生活してく上で更正を図っていく補導委託先があるんだけど、当時そこにいた父の話
少年院とは違って脱走出来ちゃうから何度も脱走しては連れ戻されてを繰り返してた
朝早く起きて薄い味の飯を食べて雑巾掛け、暇な時間は瞑想、娯楽は無し
普通の青少年にはキツい生活だったと思う
何度目かの脱走を経てなんやかんやあって精神病院に送られることになった
やっぱり色んな人がいて、大変なことも多いけど以前の退屈な生活よりはむしろ楽しかったそう
次第に仲の良い奴もできたり、なにより女がいる
その中にひとみさんという女性がいた
歳は知らないがおそらく20代前半くらい
よく見ると整った顔立ちをしていてスラッとした長身ではあったが、肩より少し長めの黒髪はいつもボサボサで、ゆらゆらと左右に揺れながらボサボサの髪をたなびかせ歩く姿は正直気味が悪かった
その出で立ち、歩き方に加えてヘラヘラ笑いながらいつも辺を徘徊していたので気味は悪かったが、精神病院だからか誰も気にしていない様子だった
極限まで女という存在に飢えていたのでそんな風貌にも関わらず今まで何度か話し掛けたが応答はなかった
ある日寝ていると変な物音がした
パサ、カサ、というような何か軽いものが擦れるような音
気になりすぐに目をあけた
そこには俺を満面の笑顔で見下ろすひとみさんがいた
いつもの左右に揺れる動きのままその場で足踏みしていた
パサ、カサという音は左右に揺れるひとみさんの髪の擦れる音だったのだ
俺は堪える間もなく悲鳴をあげ、何を思ったか思い切りひとみさんの頭を叩いた
グニャ
「…え?」
やばい。そう思った次の瞬間ひとみさんが大声で泣き出した
え〜ん、といった子供のような泣き方
その後は気絶したのか、いつの間にか寝てしまったのか記憶が定かでない
俺は次の日仲の良い患者にひとみさんのことを聞いた
俺「昨日俺、ひとみさんのことぶっ叩いちゃった 夜いきなり部屋にいてさ」
友人「ひとみさんて?」
俺「いつもヘラヘラ揺れながら歩いてる黒髪の女だよ、背ぇ高い」
友人「そんな奴いる?」
俺「いるじゃん、お前らいつも相手にしてないけどさ」
友人「やー、俺は知らんわ どこにいんの?」
俺「そういえば今日は見てないな」
内心嫌な感じがした
その日以降ひとみさんの姿を見ることはなかった
叩いた時のぐにゃ、っとした嫌な感触を思い出す
俺のせいで怪我などして転院してたらかなり後味が悪い
どうか幽霊であってほしい
※父親の過去の経験談です
なるべく脚色せず父親目線で書きました
めちゃくちゃ霊感あるのに自覚がない父親の話 西村与経 @nishimurayodatu
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