オネショタインの双体性理論

英 悠樹

オネショタインの双体性理論

 アーナルト=オネショタインは天才科学者である。


 彼の名声を高めたのは双体性理論。中でも、光速に近いスピードで腰を振ると、時間の進みが遅くなり、永遠の快楽を得られるという斬新な理論は皆の喝采を浴びた。実践しようとして腰を痛める人が続出したのは仕方の無いことだろう。科学の発展に犠牲はつきものなのだ。そんな天才科学者の思索の風景は───


「マルチェラ、もうダメ、お願い」

「あらあら、アーナルト様、ダメですよ、そんな簡単に屈してしまわれては。もう少し我慢あそばせますよう」


 ベッドに腕を縛り付けられ、目隠しをされた少年。彼こそはオネショタイン。世界的天才科学者が年端も行かない少年であることを知る者は多くない。


 そしてオネショタインに覆いかぶさり、嗜虐的な笑みを浮かべるのは、マルチェラ=グロスマン。オネショタインの忠実なメイドである。


 そのマルチェラが纏うのは煽情的なメイド服。デコルテが大きく開き、コルセットで締め付けられたウェストでさらに強調された双丘の谷間をこれでもかと見せつけている。ミニスカートからはガーターに吊るされたストッキングに包まれた太ももが覗き、見る者の劣情を掻き立てていた。


 だが、目隠しをされたオネショタインはその姿を見ることが出来ない。目隠しを外して欲しいと言う彼の哀願はマルチェラに容赦なく却下される。


「アーナルト様、想像の翼を広げるのです。そうすれば、より深い快楽が得られますわ」

「ああ、マルチェラ、僕のマルチェラ、酷いこと言わないで」

「ダメです」


 二人は何をしているのか。それは人類共通のあるテーマについての思索。すなわち、おねショタかショタおねか。


 世間ではおねショタ過激派とショタおね過激派が時に流血を伴う争いを繰り広げていた。その争いに終止符を打つための崇高なる思索、その風景なのであった。


「ねえマルチェラ、この腕の枷をほどいて」


 このままでは一方的に嬲られるだけ。早々に結論が出てしまう。だが、反証が無ければ理論としては片手落ち。そのためにも嬲られるだけではいられないのだ。だが、マルチェラは舌なめずりしながら、その申し出を却下する。


「ダメです。だってアーナルト様は、こう言うのがお好きでしょう?」


 そう言うと、目隠しされている頬に手を当て、ツーっと撫でる。その指が唇、首筋、胸、とどんどん下に下がっていく。そしてさらに下がると、オネショタインの身体がビクンと震えた。その震えと同時の迸りにマルチェラの顔が歓喜に輝く。


「ああ、アーナルト様、素敵です」

「酷いよ、マルチェラ。僕の方が主人だってこと忘れてないよね?」


 オネショタインの口からつい漏れた恨み言。だが、それはマルチェラの笑みに塗りつぶされる。


「もちろん忘れていませんわ。私はメイドとして、アーナルト様がお望みのままにして差し上げているだけですもの」


 そのマルチェラの言葉は真実のもの。それは恍惚の表情を浮かべるオネショタインの姿を見れば明らかなのだった。





 こうして、二人は攻守を変え、思索を続ける。その果てに、オネショタインはついに一つの真理にたどり着いたのだった。おねとショタの関係は相対的であると言う真理に。


 その相対性を組み込んだ理論は、これまでの特定条件下での理論に留まっていた特殊双体性理論に対し、より現実世界に適応するものとして、一般双体性理論と呼ばれることとなった。


 そして、その功績により、彼はノーベルおねショタ賞を受賞することになる。授賞式に共同研究者であるマルチェラに首輪をつけられ、出席した彼の姿は永遠の語り草となった。


              お終い



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オネショタインの双体性理論 英 悠樹 @umesan324

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