勇者によって魔族との長きに渡る戦いは終止符を打った。そして、その瞬間に勇者はその姿を消す。世界を救った少年は伝説になった。
勝利に湧き立つ王宮の中で、勇者の足跡はまるで知られず、関心も持たれない。そのことに違和感を抱いた王女アンは、賢者ネーナへとその姿を変え、勇者の足跡を辿るべく、一介の冒険者に身を窶すのだが……。
壮大な冒険の裏で語られる、陰惨な陰謀と途方もない魔法と世界のシステム。それに気づいたネーナ(王女アン)は仲間たちを集め、冒険者として地道に成り上がりながらも、捨て置けない悪と対決していく。
その先に待つ真実とは一体如何なるものなのだろうか。
勇者の活躍の裏で蠢く陰謀という縦軸を追いつつ、冒険者としてのネーナの活躍が横軸として語られる。彼女の元に集う仲間たちは個性豊かで魅力的。かつての王女の剣であり、ネーナの兄としての役割を全うする刃壊者(ソードブレイカー)オルトの活躍は特に鮮烈だ。
異世界の人々の暮らしを丁寧に描くことで、現代から訪れた勇者の活躍をさまざまな角度から俯瞰する異色の異世界ファンタジー大河小説。
アンという王女がいました。彼女のいる世界――王国は、異世界より『勇者』を召喚し、救われました。
だがその勇者は魔王と相討ちて、果てました。
が、誰もその勇者を、彼を悼むことはなく、アンはそのことを不審に思い、そして――
勇者様のことを知りたいという願い、決意を胸に、アンは歩み出します。
その歩みは、故国を出て、異国へ渡り、そして――『王女』という殻を破り捨て、アンはさらなる先へと、勇者へと歩み、走り出します。
200話近く、80万字超(このレビュー投稿時現在)の大作ですが、それだけの見ごたえがあります。
かくいう私もまだまだ読み途中ですが、これからのアンの道行き、冒険にワクワクしています。
まだまだ続くこの物語――皆様も、アンと一緒に旅路へ出てみませんか。