エピローグ

 ペレンディに、墜落する宇宙戦艦が迫る。

 ライカはクラフ島の技術将校に呼びかけた。


「あとは任せていいかな。技術将校」

「もちろんだとも。任せたまえ」


 ライカは仕事を果たした。次は彼の番だ。


「対象は落下中の宇宙戦艦。ペタル・フォール」


 ひらひらと舞い落ちる花びらペタルのように――

 宇宙戦艦はゆっくりと地表に墜落する。


「本来なら高所から飛び降りるために使う魔法ですが、クラフ島の魔力なら宇宙戦艦にも有効ですね」


 空から墜落する宇宙戦艦は最後の悪あがきにレーザー砲や粒子ビーム砲をクラフ島に放っているが、すべてバリアによって防がれている。


 空を見上げる冒険者たち。


「あいつら、レイドボス討伐に成功したか」

「俺達も参戦扱いになるらしいからな」


 ドワーフ族とバムン族が顔を見合わせる。


「よし! あの宇宙戦艦を解体じゃ!」

「ドロップアイテムを回収だね!」


 実際、倒された帝国兵のアサルトマニューバクローズは一箇所に集められている。

 捕虜となったサイボーグたちは無言だ。解体されないか不安げな様子だ。


「あ、ライカたちが帰ってくる!」


 ドラグアと僚機二機がクラフ島に向かって飛行している。

 サイボーグ兵が騒いでいるガーグ。技術将校――エルフ族の長が進み出て通訳魔法を使い会話を試みる。


「お前たち、わかっているのか。俺達が敗北したとなったら、宇宙帝国のセヴェルス皇帝陛下が動き出すのだぞ」


 技術将校は穏やかに笑う。


「何をいっているのです。どのみちあなたたちは私達生きている者の肉体を欲するのでしょう? あなたたちはペレンディを襲う災害の一つに過ぎません」

「災害と違って俺達は軍隊なのだがな! 宇宙艦隊本体が動くぞ」

「厄介ですねえ。でもほら」


 技術将校は天空を指し示す。その先にはドラグアがいた。


「私達にはあの機装ドラグアがあります。かの機体をベースに様々な機装が作られるでしょう。あなたが知らないことを一つだけ教えてあげます」

「なんだ?」

「我々が宇宙帝国の侵攻を感知した時期は三十日程度前です。一日は地球時間標準で24時間換算。あなたたちも同じでしょう? ドラグアはその間に製造され、ドラグアをベースに量産機が開発されて生産されたのですよ」

「そんな短期間で?」

「あなたたちの言葉でいう工業力でしょうか。私達はクラフト効率と呼んでいますけどね。今から機装は量産が本格的になるのです。宇宙帝国本体とやらは間に合いますか?」


 技術将校の穏やかな微笑みは、一転して冷笑に変わる。


「そんな……」


 たった三十日日で彼らに対抗する戦力を整えた。宇宙帝国の常識に照らし合わせるとあり得ないことだ。


「広大な世界ペレンディはまだまだ冒険していない謎の遺跡がたくさんあります。私達が宇宙へ進出することなどしばらくはありませんね」


 技術将校は空を見上げる。サイボーグ兵たちの処遇は神官長が決めるだろう。

 宇宙は遠い場所。ペレンディの住民にはまだ早い。


「しかし必要とあれば私達も宇宙へ行きますよ。この世界・・を。ペレンディを護るためならね。ドラグアと戦ったあなたは理解しているはずです。我々の機装は宇宙でも活動可能なポテンシャルがあるということを」


 それでも必要とあればクラフ島とその住人は宇宙へ向かい、宇宙帝国と戦う覚悟をすでに持っているのだ。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「終わったな」

『まだ早いぞライカ。むしろこれからだ』


 ライカの言葉にジュルドが応じた。


「宇宙帝国か。まだ襲撃してくるかな」

『来たら俺達で倒せばよいだけだ』

「そうだな」


 クラフ島が間近だ。冒険者たちは帝国兵のアサルトマニューバコートや四脚戦闘車両をすべて破壊したようだ。

 一部の者が解体に勤しんでいる。


「宇宙帝王なる者がきても、撃退すればいい。連中が惑星破壊を試みるなら、クラフ島を飛ばして攻めてもいいな」

『妙案だ。こちらが攻め手になるとは思ってもいないだろう』


 ゲーム風異世界の冒険者が、自分達を殴りにやってくるとは宇宙帝国も想像だにしないだろう。


「私達もいきますよ。宇宙の果てまでついていきますからね」

「当然だね~」


 リスペリアとフィネラが釘を刺す。こういう場合、ライカは彼女たちを安全な場所に置くという思考をしがちだからだ。


「俺としてはペレンディにいて欲しいけどね。考えてみればクラフ島の方が安全だな」


 今回スムーズに撃退できたが、課題も見えてきた。

 宇宙空間で活動する機体が限られていることや、砲弾の栽培という性質上、大量生産に向かないこと。

 魔砲をいかに発展させるかが重要になっていくのだろう。


「次こそは宇宙帝国と戦争かな。――備えなければ」


 宇宙帝国が攻めてこないならその方が良いが、宇宙戦艦三隻の侵攻で済むとは思えない。

 ライカは来たるべき宇宙帝国軍との戦争を予感しているのだった。 

                                                       

            end




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ここまでお読みいただき誠にありがとうございます! これにて完結です!


今回は2万字から6万字制限という第6回ドラゴンノベルス小説コンテスト中編部門ファンタジー×SF用に書き下ろした完全新作で、5万字程度で着地できました。

限られた文字数ではありましたが、自分なりのファンタジー&サイエンス・フィクションをふんだんに盛り込みました! 

最初のタイトルは「楽しかったぜ? お前たちとの(略)」でしたがカクヨムの表示上、キャッチコピーにしたほうが良いと判断でこのタイトルです。

ファンタジーに振ってもよし、メカものに振ってもよしと幅を広げられるように構想して執筆しました。ヒロインたちにフォーカスしてもいいですね。


読者の皆様がこの作品を楽しんでいただければ、作者としてこれ以上の喜びはございません。

応援のほど、何卒よろしくお願いします!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

精霊騎士、宇宙帝国に立ち向かう!~信じていた精霊が超未来のAIでしたが戦闘メカ【精霊機装ドラグア】のOSになってくれたので共に戦います! 夜切怜 @yashiya01

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画