最強魔砲フォトニュークリアリアクションブラスト
海面に向かって墜落していくガーグが叫ぶ。
「お前たちはやりすぎた! 我が宇宙艦は質量兵器を射出する! 10トンもの巨大砲弾を超大レールガンで射出するのだ!」
宇宙戦艦が、鉄杭のような巨大砲弾を地表に向けて発射する。
単純な構造ながら、小惑星衝突現象を可能にする惑星攻撃兵器であった。
「俺は精霊騎士。防御には自信があるんでね。――アルティメイト・ガード!」
回数制限のあるナイト系のスキル、アルテティメイト・ガードを発動しながら、迫り来る巨大鉄杭にプラズマブレードを突き刺すドラグア。
「ジュルド!」
『おう!』
無詠唱魔法プラズマ・エクスプロージョンを発動する。鉄杭に突き刺した刀身から放たれた超高音のプラズマが内部から破壊する。
大爆発を起こした質量砲弾の爆風を、すかさず盾で防ぐドラグア。
「そんなばかな……」
海面から頭上を見上げて呆気に取られるガーグ。
「一気に畳みかける!」
急上昇するドラグアは成層圏を突破する。
ドラゴンハートリアクターにより、宇宙空間に自力で到達可能な推力を持っている。
『ディーリッドから宇宙戦艦の図面が転送されたぞ』
「俺達もリアクターを叩くか」
降下中の宇宙戦艦は狂ったように対空射撃を行い、ドラグアを撃墜しようとする。
螺旋を描くように回避行動を取り、すべての対空射撃を回避するドラグア。未来位置も螺旋の大小を調節して予測をずらしている。ジュルドがいかに高性能化を思い知るライカだった。
「やるなジュルド!」
『我の力を引き出せるライカがいてこそだぞ』
事実ジュルドの言う通りだった。精霊騎士として卓越した能力を持つライカでなければ、ジュルドもドラグアが持つ性能をここまで引き出せなかっただろう。
「俺達なら世界を救える!」
『その通りだライカ!』
今やジュルドの惑星でもあるペレンディ。
ASIたちも今や自分達を精霊と定義している。この世界はこのようにできているのだから。
『迎撃部隊がおでましだぞ』
「大丈夫! 背中はリスペリアに任せてある!」
阿吽の呼吸。ライカの背後には常にリスペリアがいた。
それは今も変わらない。
「パニュッシュメント!」
リスペリアが魔砲を連射する。神性魔法は帝国兵が搭乗するアサルトマニューバクローズの装甲を一撃で貫通した。
「ダメージも回復しますよ。リペア!」
「助かるリスペリア!」
精霊機装の自己復元能力を最大限にするディーリットの魔法によって、ドラグアの鉄杭砲弾で受けた受けたダメージは瞬時に回復する。
「私も支援する~。ライカはその間に突入して~」
フィネラが魔砲による支援攻撃で参加する。戦艦の対空砲を丁寧に潰していく。
ドラグアはプラズマブレードで宇宙戦艦のハッチ部分を切り裂き、戦艦内に突入した。
「どけ!」
大型艦だけあって、すべてマニューバクローズだ。宇宙服と作業機械を兼用しているのだろう。
立ち塞がる大型作業機やアサルトマニューバクローズを撃破し、戦艦の機関部である区画に向かう。
「そこまでだ!」
武装したアサルトマニューバクローズの一団が立ち塞がる。
艦内なので武装が制限されているが、閉所に対して相手はたった一機。ここで食い止める気概に溢れていた。
「この奥には行かせない」
サイボーグ兵がドラグアに向かって告げて発砲するが、すかさず盾で防ぐドラグア。
「今ここで決着をつける」
魔砲を構えて照準をつける。レーザー照射だ。
「は! たかが1ギガジュール程度のレーザー光線など!」
レーザー対策は宇宙戦争には必要不可欠。アサルトマニューバクローズもレーザーよりかは実弾兵器を警戒していた。
「これはな。真空を作り出す、道だ」
「道?」
「いくぞジュルド! 奥の手だ。確実に仕留める。あの魔砲を使うぞ」
『おう! 対ガンマ線フィールドを発動!』
ジュルトが機体周囲にバリアを張る。それだけの大威力を持つ、魔法に非ず。まさしく魔砲。禁忌ともいえる威力を有している。
二人は声を合わせて、叫ぶ。
「フォトニュークリアリアクションブラスト!」
『フォトニュークリアリアクションブラスト!』
ジュルドは火と光。稲妻の複合精霊だ。雷に対する優れた権能を持つ。
雷は高エネルギーのガンマ線を放出する。ガンマ線が大気中の窒素原子に衝突すると、光核反応――
ジュルドは事象の工程で発生する陽電子を集約して
大気と稲妻の化身を模した複合精霊ジュルドがドラグアのOSとなり、ドラゴンハートリアクターの大容量エネルギーによって行使可能な最強魔砲――それがフォトニュークリアリアクションブラスト。
触れるものすべてが対消滅を起こす陽電子を亜光速で叩き付ける反物質版の荷電粒子ビームによる攻撃に対し、帝国の宇宙艦に為す術はなかった。
「ばかな――-」
通路を塞いでいた帝国兵たちは悲鳴を上げる暇もなかった。生き残ったとしてもガンマ線による超高温によって溶解していった。
光線上にいるアサルトマニューバクローズは瞬く間に爆発して、リアクターの扉を貫通する。
陽電子ビームが艦のリアクターに直撃すると盛大に爆発した。
「宇宙が見えるな」
陽電子ビームは艦尾まで貫通する。降下中だった宇宙戦艦からは煌めく星が見えた。
やがてビームの軌跡はオーロラとなって広がっていった。人々が空を見上げ、ドラグアを讃える。
『このまま脱出するぞ」
「おう!」
ドラグアは自分が拓いた貫通痕の道を辿り、艦外に出る。
眼下には予備動力もろくに作用せず、ゆっくりと地表に墜ちていく宇宙戦艦の姿があった。
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