何故、その選択をしたのか。そう問いたくなるような、そんな選択をしてしまった少女の物語。いや、その過程を描いているのだから、分かりはするのです。その選択を、彼女がどうしようもなく選んだしまったことも。それでも、やはりその前に出来ることはあったのではと思ってしまう。ですがそういった研磨されたように鋭く狭くなった視野と、そこまで思いつめるほどに一点を見つめるような想いこそが、人の心を揺さぶるような作品を描く原動力だった、とも言えなくもなく。最後の明るい青空とは別の何を、心に残すような作品でした。
「翼をください」の歌が好きなので、まずタイトル・キャッチコピーに惹かれました。そしてあらすじの「人を殺したいから絵を描いている」という言葉で、これはすごく好きな小説かもしれないと思いました。豊富な情景描写、心理描写、表情をあらわす言葉も豊かで、様々な描写が読み手の心に訴えかけてきます。息苦しさを抱えている「先輩」は自らの感情をどう対処するのか。文章とは美しいものなのだ、と感じさせてくれる素敵な作品です。
私たちは、翼の存在を忘れてはいけない、忘れたくない。若い魂のもどかしさに、心、震える。
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