ふっと灯る光、小さなおしゃべりの魔法

 野々宮可憐さんが詠む短歌から、野々宮可憐さんの短歌たちは、まるで季節の風や光をそっとすくい取る繊細な指先のように感じられました。桜の別れが静かに告げる「次は君らの番だよ」という優しいバトン、新緑が芽吹く希望の景色。そして、運動会の喧騒の中に潜む“やりたくはない”という観客の本音には、クスッと笑ってしまいました。ラムネ越しの青春の眩しさ、曇天を切り裂くような恋心……どの歌にも、心にふっと灯るような温もりがあり、そっと差し出された問いかけや願いに、まるで詩人と内緒話をしているような気持ちになります。読み終わるころには、いつもの日常がほんの少しきらめいて見える──そんな不思議な魔法を感じました。

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