蝉という生き物。夏の風物詩。 その生の長いときを土の中で過ごし、外でありったけ鳴くのは、ほんの短い間だけ。 その生は、儚いのか? たくましいのか? 「騒がしい」と表される、あの鳴き声が確かに聞こえてくるけれど。人の眼差しから静かに、真摯に、多角的に、この生き物のすがたと向かい合った。そんな五首。 厳選に厳選を重ねられたと思われる言葉で、大切に紡がれた歌たち。読めば読むほど、読み手の想いが広がりゆく、まさに珠玉の作品です。 また夏が来て、蝉が鳴きます。 皆様もぜひ、味わってみてください。
これから夏に向けて、蝉たちが活発に動き出す頃ですが、その前にこの短歌の数々をよんでみるのはいかがでしょうか?よんだあとに、蝉を見ると今までとは、違った感情が芽生えると思いますよ。
一番好きな季節はいつ? と訊かれたら、私は迷いなく夏を選びます。最近の夏はちょっと暑さが厳しすぎるようですが、それでも蝉の声や入道雲が好きだから。そして夏というのは不思議と子供時代の思い出に彩られた季節でもあります。こちらの短歌集は蝉をテーマに、命の尊さと儚さを描き出し、誰の記憶の底にも眠っているであろうノスタルジックな夏の風景をよみがえらせてくれます。
「蝉」という題材で創作を…となると、その生の短さで物悲しさを感じることが多いでしょうか。または夏の厳しい暑さか。それを増長するけたたましい蝉の声か。しかし、作者様の描く「蝉」の世界はとても静か。いえ、確かに声の煩さも、夏の暑さも感じるのです。それなのに、切り取られた一場面が不思議と静かで、そしてとても強い生命力をも感じさせてくれる気がするのです。これから土を這い出てくる蝉たちの生命に想いを馳せてしまう短歌。オススメです。
蝉を題材に、そこにもの悲しさを漂わせる作者さまの意図がそこにあるかより、読んだ自分がそう感じます蝉を見て詠まれていますが、蝉に感情移入してしまったからでしょうか?そんなことを思わせる、考えさせられるお歌です