東日本大震災、編集長日誌

2011年03月16日水曜 「地震後」の仕事を生きる。紙がない。

地震以来仕事を続けている。寝てる間以外は全部仕事。読者に情報を届けなくては。とてつもなく忙しい。今日も７時半から仕事を始めてやってきたが、やっと終わった（ことにする）。昨日風呂入ったけど４日ぶりだ。

BCP上の問題が生じている。大日本、凸版といった印刷会社の工場は無事だったが、製紙会社が被災した。そのため紙の手配がたいへんだ。地震以来新聞が薄くなったのも、一因には当面の紙確保の理由があると聞く（ただこれは一因であって、もっと大きな理由がいくつかある）。

日本は災害に慣れているからだろうか。被災地では驚くべき速度でライフラインの再確保が進んでいる。避難所にいれば、もうよほどのことがない限り死ぬことはない。今後は快適性の回復と心理ケア、住宅確保が課題になっていくだろう。

ではあるが、現状は福島がとんでもないことになっている。私は物理系は詳しくはないが理系なので、原子力も初歩の概要くらいはわかる。４つの炉が同時に危険になるという、世界でも稀な原子力事故だ。

現地では東電の技術チームが全力で対応しているはずで、彼らが力を発揮しきれるよう、国民として声を上げて応援したいところだ。緊急時に彼らをアウェーに置いても日本人は得しない。「誰が悪い」ごっこは緊急事態が解決してからだ。

現状で言えばTVではキャスターが専門家に「先生この東京の平常の20倍というのはどのくらい危険ですか」とかやってる。そりゃわからないんだから当然だろうが、キャスターが感情的になっていては視聴者を不安にさせる。もっと冷静に差配するべきだ。実際ネットでも面白がってるとしか思えない脅しが横行している。

私の認識では、ほとんど問題ない。そりゃ少なけりゃ少ないほどいいのはたしかだが、遺伝子にはエラーを補正する機能もある。東京の現状の放射線を浴びた程度で将来健康に大きな問題が生じる確率は、自動車事故で死ぬ確率よりはるかに小さいだろう。気にするだけあほらしい。こんな心配するより禁煙したり運動したほうが、ずっと病気で死ぬ確率を下げられる。

問題なのは現地の原子炉の本当の間近で作業している方々くらいだろう。頭が下がる。

ただ今後は別。おおまかには東電の技術者は状況を把握しているはずだし安全な設計だ。このためどちらにも欠けたチェルノブイリのような危険な爆発に到る可能性は、「最悪の最悪」でかなり確率が低いだろう。ただしある程度の期間水をなにかの方法で投入して冷却し続ける神経質な対応は必要になるだろう。

損傷を受けているため、その間、それなりの放射性物質が放出されるはずだ。しかし放射線物質の多くは半減期も短いだろうし体内蓄積もしない。時間が経っているだけに当然だがきちんとした管理下での対応なので、医学面・運用面のサポートもしっかりしているはず。一時的に放射線量の観測数値が上がってもパニックになる必要はなく、大きな問題はない（小さな問題は多い）。

体内に蓄積するセシウムやヨウ素とかだけ気をつけておけばいいがこのレベルの漏洩では急速に蓄積するわけでもないので、そちらは検診対応で十分だ。

おおむね考えられる最悪のパターンでもメルトダウンするくらいだろう。しかしそれはそんときだ。

広島だって「50年は草木も生えない」と言われていたのに数年で復興している。私の係累は広島で被爆して何人も死んでいるので、悲惨な状況は聞いてる。それでも復興しているのだ。あの時代の貧しい日本でさえ。今の日本ならもっと大丈夫だ。

福島は困難な状況に追い込まれるので、全国で支援すべき。特に電力の恩恵を受けていた東京は。それに東京での被爆量はその場合でも大丈夫なはずで、なおのこと責任がある。

あくまで個人的な仮定の話だが、被爆して「30年後に癌になります」ったって、私は別にそれでいい。急性で１か月で死ぬのは嫌だが、徐々に死ぬのならいいや。きっとどこかであきらめられるから。医学が進歩してるだろうしその頃。

とにかくパニックにならないこと。正しい情報を入れること。日本人は災害対応が得意なはずだ。だからこそ今回の震災でも社会的混乱が少ない。私もあきらめる。

（01:38記述）