あらすじ

コンテスト応募に際してのあらすじとなります。

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 イベント会社に勤める男、山田は三年目にして心を病んだ。身動きが取れず、自宅に籠もり無為な日々を過ごす山田を、古くからの友人である川田は強引に連れ出す。山に囲まれた、とある田舎の平屋へと。

 一人平屋に置き去りにされた山田は、初日の深夜、何やら騒がしい音で目を覚ます。

 庭先に出てみれば、そこにはなんと、妖怪たちが百鬼夜行の群れをなし、夜道を闊歩していた。

 山田は呆然と立ち尽くし、ああ、これは夢かと判断すると、妖怪たちへ怒鳴り込んだ。

 妖怪たちは憤怒の様相を見せる山田を群れに引き込み、酒でもてなすことで機嫌を取ろうとした。それから山田は、田舎で妖怪たちとの一夏を過ごすこととなった。

 川で本分を全うする小豆洗い。釣りをするぬらりひょん。家に居着く幽霊少女のナツキ。食事を届けてくれる小年ホズミ。インターネット発祥の妖怪に化け、山田を襲い撃退される化け狸のヒヨ子。ボディーガードを買って出てくれる美少年の猫又。木の枝に引っかかって取れなくなった一反木綿。

 山田は数々の妖怪たちや一人の少年と知り合い、時に釣りをし、時に花札に興じ、時に虫取りに出かける最高に珍妙な夏を過ごしていく。

 そんなある時、ホズミにナツキが幽霊であるということがバレてしまう。良識的な少年であるホズミの常識を歪めてしまうことを恐れていた山田は、どうにかフォローしようとするのだが、一度別れ、次に顔を合わせた時、ホズミはすっかりナツキの事を忘れてしまっていた。

 記憶を消すことが出来る妖怪がいる。そう判断した山田は、ぬらりひょんへと詰め寄った。ぬらりひょんは言い渋ったが、言い逃れが出来ないと悟ると、ぽつりぽつりと真実を語る。

 ホズミとナツキ、それから猫又は旧来からの友人であったということ。事故でナツキと猫又が溺死し、その日から、ナツキは幽霊に、猫又は妖怪になったのだということ。

 そして、ナツキの願いでナツキとホズミの縁を切り、猫又の願いで、猫又とナツキの縁を切った、縁を自在に切り結び出来る存在。

 それが妖怪の総大将たる自分、ぬらりひょんであるという事を。

 全てを聞いた山田はたった一言、つまらんと吐き捨て、ナツキの元へ向かおうとする。それを阻止するべく動いたぬらりひょんによって、山田もまた、妖怪達との縁を切られてしまう。

 山田の日々は、田舎に連れてこられる以前の、鬱々とした日々に逆戻りした。日々苦しみ、憂鬱を膨らませ、ついには自死を決意する。

 その時、山田はヒヨ子を踏んづけた。ヒヨ子の逆襲を受け、貞操の危機を迎えた山田が咄嗟に取った行動は、側に転がっていた木刀を掴み、それでヒヨ子を撃退するというもの。

 山田はかつてのヒヨ子との出会いをやり直すような形で、失った記憶を取り戻した。

 記憶を取り戻した山田は、ホズミとの関係を思い悩んで屋根裏へ閉じこもるナツキの下へ向かい、彼女の「もう一度みんなで遊びたい」という本心を引き出す。

 次にぬらりひょんの下へ向かい、子どもに対する大人の責任を説き、自身とぬらりひょんらとの関係から、妖怪と人が共に過ごせることを証明してみせた。

 ナツキを連れ出し、ぬらりひょんを味方につけた山田は、ホズミのいる夏祭りの会場へと、妖怪たちを引き連れ突撃した。

 魑魅魍魎の百鬼夜行にのまれ、混沌の渦の最中となる夏祭りにて、ナツキはホズミと和解し、死後一緒になろうと、かつての約束を再び交わす。

 一方山田は、混沌としながらも妖怪も人も、誰も彼もが笑い楽しむ様子を見て、これこそが自分のやりたかったことなのだと、自身の指針を新たにした。

 夏が過ぎ、秋になって社会に復帰した山田は、春先に事故で死亡し、幽霊となって田舎へと戻る。

 いつもの川でぬらりひょんやナツキと釣りをしながら、山田は自身のこれからの活動目標を告げた。

 それは、自分やナツキのように自分の力で動くことが出来なくなった者を招待し、妖怪たちとの素敵な夏の思い出をプロデュースするというもの。

 ナツキの制止の一切を無視し、山田は自らの今後に思いを馳せるのだった。

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夏ト田舎ハ斯ク在ル可シ 舟渡あさひ @funado_sunshine

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