【かな】ありがとう、を。あなたに。

しじんがひとり、おりました。


たくさん、たくさん、しをかいて。


まいにち、まいにち、うたっていたら。


きいてくれるひと、あらわれた。


たった、たったのひとりだけ。


だけどしじんは、だいかんげき。


きいてくれたよ、やさしいあのこ。


いつかなりたい、りっぱなしじん。


そしたら、あのこにつたえたい。


だいすきです、とひとことを。



すると、あるひのことでした。


しじんのもとに、しのたねが。


しのたね、それは、なんでしょう。


そうです、ことばのたねでした。


しをかき、よんで、そだてたら。


うつくしいみが、みのります。


あまたのうつくしいことばの、み。


えらばれししじんの、あかしです。



ひとびと、しじんをほめそやす。


めいよだ、すてきだ、すばらしい。


ひとびともとむ、しじんのし。


それでもしじんは、あのこのためだけに。


うつくしいみが、みのるのをまちながら。


しをかき、よんでおりました。



あなたにおくると、やくそくしたよ。


あなたのための、すてきなし。


あなたはそれを、まっていてくれて。


わたしはとても、しあわせです。


まずは、このしを、おんなのこにと。



そのまも、しのたね、ぐんぐんそだち。


いつか、しぜんにつぼみをつけて。


はながさきそう、そのころに。


あとすこしだよ、とつたえたら。


とてもよろこぶおんなのこ。


しじんはとても、しあわせでした。



あるひ、しのたね、はながさき。


とても、とても、うつくしい。


つたえなければと、あのこのところ。


なぜか、おうちはからっぽで。


どうして、どうして、なんでなの。


しじんはひとり、なきそうに。



おいしいすーぷに、あのこのえがお。


すてきなおうちのてーぶるに。


おかれていたのは、しじんへの。


さいしょでさいごの、らぶれたー。



めいよやおかねが、なくっても。


あなたのしがね、だいすきでした。


だけど、とつぜん、あのたねが。


わたしだけのあなた、だったのに。


そんなふうにおもってしまう。


じぶんがとても、いやでした。


だから、ごめんね、さようなら。



しじんはすぐに、はなのもとへ。



たねからうまれた、きれいなはなよ。


そのみのなかに、あるのはきっと。


あまたのすてきなことばたち。


それより、わたしはことばをひとつ。


とどけたいんだ、どうしても。


だからおねがい、きれいなはなよ。


どうか、わたしと、ともにきて。



ねがいをきいて、おちる、はな。


いだいなたねの、なれのはて。


しじんはかまわず、かけていく。



どれだけつきひがたったのか。


しじんはいまは、ぎんゆうしじん。


きれいなこえで、しをうたう。



すてきなひとよ、いまどこに。


きょうもしじんは、まちからまちへ。


すてきなはなを、むねにさし。


すてきなことばを、こころにいだき。


あしたもきっと、さがします。


だいじなだいじな、あのひとを。


むねにさしたる、おはなといっしょ。


いつかみのると、しんじています。







※犀川よう様の自主企画、さいかわスプリングダッシュにて「春ダ賞」を頂きました。誠にありがとうございます。

こちらの【かな】は、草稿時にひらがなでしたものを改稿いたしました。

多少、音の表記が異なる部分もございます。本編とともにご確認頂けましたら幸いでございます。


犀川よう様、皆様には厚く御礼を申し上げます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

あなたに、とどけ。 豆ははこ @mahako

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ