シンプルな、シンプルな応援

 書くのをやめたくなる時、躓く時、多くの人のその理由は「読者がいないから」だ。
 小説投稿サイトは読者の数が可視化されるし、評価までつく。
 読者の少ない人の創作意欲がポキンと折れるにはもってこいの、残酷すぎる仕様が揃っているのだ。

 カクヨムでPVが伸びない人でも他の投稿サイトではPVがつくこともある。
 実験してみたことがあるが、カクヨムでは平均PV20のわたしでも、他所では、一週間で数千回った。
 ユニークユーザー数も一気に四桁近くまでいったのだ。

 カクヨムでは一年経ってようやくPV50になろうかという作品が、他のサイトでは1時間でそれ以上に稼ぎ、さらにずんずんと数字が伸びていくのだから、あまりの違いに震え上がった。
 さすがに「差がありすぎ」と笑いながら撤退したが、もしかしたら本当に、その数の人が読んでくれていたのかもしれない。更新するたびに、棒グラフが突き抜けていたからだ。

 そんなわけで、PVはあなたの作品の価値を決める絶対的な物差しでもないし、投稿サイトにも、それぞれの特徴がある。
 交流ありきのカクヨムではまったく動かなくても、他のサイトなら伸びるかもしれない。
 その時、わたしが学んだことは、PVが多かろうが少なかろうが、わたしの書くものは変わらないということだ。

 小説を書くことはとても難しい。
 誰にでも書けるようでいて、誰もが書けるわけではない。
 ほとんどの人が「上手に書けるようになりました」止まりだろう。でも難しく考えなくていい。

 あなたは自分の好きな作品を書いているだろうか。
「実は本当に書きたいものを書いてない」そんな、つまらないことになってはいないだろうか。

 わたしたちは何の為に書いているのだろう。いちばん最初に書いた小説は、あなたの全ての作品の中でいちばん下手で、そして一番、かがやいていたはずだ。

 溜息をつきたくなる時は、ただ、あの頃の気持ちに戻ればいいのだ。
 この世でもっとも自分が好きな物語を自分で書く。ただそれだけ。
 とてもシンプルで、素直で、わくわくしてくるではないか。

 一番最初に小説を書いた時のあの気持ちを想い出せるなら、外部が決めた物差しに振り回され、こんなにも多くの人が傷つき、悩み、書くことをやめたり、数字に無駄に苦しむことはないものを。