第6話 山の神の恐怖
いくつもの山を越え、いくつもの谷を渡り、私は必死に元いた岩山へと戻った。しかし、そこに立ちはだかっていたのは山の神の巨大な陰であった。
まるで巨蛇のようなおぞましい姿をした山の神は、全身を金属のようなうろこでおおわれていた。その先端の頭の先では、なぜか、ずっと舌を突き出しており、岩山の前で構えて静止していた。
「はい、痛くなったら手を上げてくださいね」
どこから発せられているかはわからないが、どうやら、これが山の神の声だったようだ。地響きのような低音が辺りに響き渡った。次の瞬間、その舌は高速回転を始めた。今度はキュイイイイインと高音の唸り声をあげながら、岩山を容赦なく削り始めた。山の神は自分の守るべき山を容赦なく破壊し始めたのだ。
わ、わたしの村が・・・わたしの村が跡形もなく崩されていく・・・・私の家族が失われていく・・・・。一方的な破壊と殺戮だった。
山の神の第一目標は我々種族の殲滅だったのだ。そのためには自分の守るべき山の破壊すら厭わない。何と恐ろしい。
私は砕かれた破片から生存者を求めた。しかし唯一見つけられたのは掘削グループのリーダーの亡骸であった。
おのれ山の神!!!!よくも私の仲間!!!よくも私の家族を!!!
私は傍らに横たわった亡骸から槍を手に取ると構えた。たとえ、一人になってもお前は私が倒す!!!
幸いにして、山の神は動きを停止したところであった。奴にも隙がある。まってろよ。今からこの槍でお前を串刺しにしてやるからな!!!
しかし、そうこうしているうちにもう一体の山の神が姿を現した。山の神は一つではなかったのだ。
もう一体の山の神は大きな口を開け、辺りの破片を次々と吸い込み始めた。すさまじい大風だ。
風の勢いがすごすぎる。もうだめだ。山の神の怒りに触れた我々が愚かだったのだ。
私が洞穴を出て、移住しようだなんていったばっかりにこんなことになってしまったのだ。
元の洞穴でひっそりと暮らしておけば・・・。
すまない・・・。本当にすまない。私の愛しの家族たち・・・・。うわああああああああ。
歯医者の受付で男性が保険証と診察券を受け取っていた。
「次のご予約、いつになさいますか?」
「来週の水曜日でお願いします」
山の神グレーマン 乙島 倫 @nkjmxp
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