【#11】堕血街のボス戦

 堕血街だけつがいの庭園にて、蜘蛛の怪物──バルケイン司祭との戦いが始まった。


師匠せんせい……行きます!!【ライトニング・アロー】!!」


 アリアは素早く呪文を唱え、光の弓矢で攻撃する。だが──。


「ヴァァアアア!!」


「くっ!? 当たりませんか……!!」


 巨体に見合わぬ速さで、バルケイン司祭は攻撃を回避する。


 恐らく、このままではアリアが攻撃を当たる事はないだろう。だったら──。


「アリアさん!! わたしに任せて!!」


 俺は右手に剣を、左手に斧を構え、司祭の方へ突進していく。完全に"攻め"に振った二刀流スタイルだ。


「ロゼルタさん!? 一人で切り込むのは危険です!?」


 心配したように声を上げるアリア。確かに周りから見れば、多少強引な戦い方かもしれないが──。


(……大丈夫。この戦いなら、やった!!)


 過去何千回と繰り返してきたゲームプレイと、現実の動きをシンクロさせる。


「ヴィァ!! ヴィァァ!!」


 とがった前脚で刺すように、攻撃を繰り返すバルケイン司祭。


 その一つ一つを予測しながら、俺はひたすら回避し続ける。


 身体は熱く、心は冷静に。


 そして、ようやくチャンスは訪れた。僅かな攻撃の切れ目が!!


「そこぉ!!」


 前脚の攻撃が大振りになったところへ──剣と斧の連撃を叩き込んだ!!


「ヴェロァァア!?」


 不意の一撃に対し、苦痛の声を上げる司祭。ダメージを入れた前脚から、ドロドロと黒い堕血だけつが流れる。


(──よし、効いてる!)


 形勢逆転。俺は司祭が怯んだところへ、更に攻撃をくわえていく。


 死にゲーのコツ、そのいち……"チャンスは一気に畳みかけろ"だっ!!


「ふんっ!! はぁ!! てやぁぁぁ!!」


 攻撃を避けて一発、また避けて一発。


 うまく敵の攻撃を誘いながら、そこへ反撃して確実に有利を取っていく。そして──。


「ググゥ!?」


(!! ようやく来たか!!)


 バルケイン司祭はバランスを崩した。脚を集中的に狙っていたので、ついに耐えきれなくなったワケだ。


 そう、これを待っていた!!


「食らえっ!!!」


 司祭の本体に、渾身の一撃を叩き込む。剣と斧による、双方からの斬撃。その威力は確認するまでもなかった。


「ヴォ……ォォ……」


 人体部分から黒い堕血を吹き出す司祭。やがて、蜘蛛の怪物は凄まじい轟音を立てて地面に伏した。


「し、死んだ……?」


 呆然と呟くアリアに、俺は鋭く注意した。


「いや!! まだだよ、アリアさん!! 堕血だけつの"再活性"が来る!!」


「さ、再活性……!?」


 堕血だけつの再活性。


 堕血だけつは宿主が生命の危機に直面した時、身体に更なる力を与えて蘇らせる事がある。


 しかも、その者は以前よりも凶暴性を増し、ますます異形めいた新たなる姿へと変身する。


 そう、ゲーム風に分かりやすく言うなら──"第二形態"ってヤツだ。


「ヴァオオオオオオォオオオオオオ!!!!」


 バルケイン司祭は咆哮し、もう一度その場に立ち上がった。そして──。


「アゥヴァ……ヴォアアアアアアアア!!」


 まるで自らのかせを外すように、腰から上の脊髄せきずいが伸びていく。

 さらに上体の肋骨も蜘蛛脚くもあしのような形へと変化して、その姿はもはや人としての原型をとどめていない。


師匠せんせい……!!」


 そんな無惨な姿になった師に対し、苦悶くもんの表情を浮かべるアリア。


 ……本来の結末ルートなら、アリアはこんな師の姿を見ることはなかった。


 なぜなら元々は司祭に会った時に殺されてたのだから。こうなるように流れを変えたのは──俺だ。


 だから、俺にはアリアを救う"責任"がある。アリアの命だけでなく、彼女の心も救わねば意味がない。


 そう、それが今回の"新ルート"ってワケだ。

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TSゴスロリ美少女・ロゼルタ様の終末世界破壊プレイ~死にゲー世界にTS転生したので、廃人レベルのやりこみで無双します~ 深海(フカウミ) @hukaumi

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