第10話
私は光沢のあるライトグレーのワンピースに、グレーのコートを羽織っていた。 『あなたの好きなファッションで』というドレスコードは彼女のお別れに相応しいように思えた。
とある広告から偶然知ったイベントの主催をしていたかつての同級生は、一年の闘病の末に他界していた。病気が判っても前向きに過ごしていた彼女はイベントの開催中にひとり旅立ってしまった。あとで聞くと、それは年の瀬の暖かな日だった。
会場にはかつての同級生の顔もあり、私は自然と自分から声をかけることができた。手離したものが再び繋がる予感がしていた。彼女の旅立ちはそれぞれに悲しみを与えていたけれど、この場を華やかなものにしようという一体感を生んでいた。リナが生きてきた証がそれぞれの顔に浮かんでいるように思えた。
もっと話がしたかった。好きなもののことや、遠い未来のこと、懐かしい話もたくさんしてみたかった。リナは憶えていないかもしれないけれど、いつだったか歌声を褒めてくれたこと、もう一度ありがとうと伝えたかった。
壁にはカラフルなカードに書かれた別れのメッセージが並び、その前に置かれた藤色のドロップチェアの上で写真の中のリナが微笑んでいた。私はグレーのメッセージカードを空いたスペースに貼り付けて会場を出た。
着席 路草藍 @yorimichi968
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