第9話

 学校を卒業し就職して何年も過ぎると、積極的に繋がないと途切れてしまうのが友人関係であると実感する。手離したのは自分の方なのだけれど、寂しく感じるときもある。同じ教室の空気を知っている人たちは、あの頃の面影を残しながら全く知らない人物になってしまっていた。私は彼らが窮屈と感じていたものを今でも好んでいるけれど、もしかしたら同じように感じることができるのかもしれない。


 あるときSNSのプロモーションに流れてきたアートイベントの広告はとても私の興味を惹くもので、近くなら行ってみようと考えて広告を開いた。いつもなら流し見てしまうので、そんな風に広告を開いたのは初めてのことだった。イベントは電車一本で行ける近場で開催されていたし、夜部もあって平日でも行くことができそうだった。私は明日にでも行ってみようかなと考えながら広告を読み進めていると、主催のメンバーにかつての同級生の名前があった。少しだけ珍しい漢字を充てているので間違いないだろう。私は驚くと同時に納得してしまった。大人になっても彼女は自分の好きなことを探究し続けているのだな。そしてこうして発信し続けているのだな。


 主催者のアカウント一覧から、リナのページを開く。随分大人びていたが、彼女の写真がアイコンに設定されていた。最後の投稿には数百のメッセージが寄せられていて、人気が窺える。今でも周囲に影響を与え、皆に慕われているのだなぁ。私は嬉しくなり読み進めていくと、あるところから内容ががらりと変わり、『生前親交がありーーー』『悔しい』といった内容のものが増えてきた。私は自然と検索サイトを開き、彼女の名前を打ち込んでどきりとした。打ち込んだ彼女の名前の後ろに『 死因』『 訃報』『 お別れ会』という単語が並んでいた。

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