第9話 狂気の連鎖
「いいえ。私は、これであのような爆発を、もう2回も見ました。結局、誰も助から無いのです」
「完全に、狂っていますね!」と、その母親が、激しい口調で言った。
「完全に狂っています。それより、早く自宅に帰って下さい。ところで、ここは、どこですか?」
「○○県○○市です。あの、「タコ・ゲーム」参加者が船に乗った○○港から数キロ離れた所です」
「それなら、息子も30分以内には、車で駆けつけて来るでしょう。
ところで、お名前と住所を聞かせてもらえませんか?」
「いえ、名乗る程の者でもありません」
そう言って、母子は、急いでこの浜辺から去って行った。
待つ事、30分あまり。息子の車が、防波堤の上にやって来た。手には、着替えもあるし、若者向けのサングラスと帽子、黒い毛のカツラまで持って来てくれた。
帰りに、検問に引っかかっても、これで、無事に、通過できるだろう。
さて、ほうほうの体で、自宅に帰った、松下洋介は、早速、飯を喰ったあと、テレビのニュースを見た。
例の、女独裁者が、演説していた。
「「タコ・ゲーム」が、本格的に始動し始めて、全国で、既に95名が生き残り名簿に載っています。個人情報なのでこれ以上詳しい事は、言えませんが……」
「嘘を付け!只の一人も生き残ってなんかいないんだよ。この俺が、唯一の証人なのだが、これを、世間に伝える術は無い。残念だ」
さて、松下家では、今後の作戦を練った。
・まずは、松下洋介の存在は、近所にも、絶対知られない事。
・病気に備え、風邪薬や胃腸薬、鎮痛剤等は用意しておく事。
・食料品は、分散して、各店で買い、一人分多い事がバレないようにする事。
そして、ニッチもサッチも行かなくなった時は、人里離れた山の中で、服毒自殺する事であった。どうせ、もう既に死んでいる身である。これぐらいの覚悟は出来たのだ。
だが、次の日のニュースで、松下家一家のみならず、世界中が仰天するようなニュースが、流れたのである。
何と、アメリカを抜いて世界一の超大国となったT国、並びに、その隣国のK国も、この『80歳定命制』の導入を発表。
これは、やがて、アフリカ諸国の低開発国も賛同国が次々と出現。
約10箇国以上も、『80歳定命制』の導入を検討中とあった。これらの国では、GDPも低く、高齢者は、邪魔者以外の何者でも無いと言うのであった。
これだけでは無い。
何と、例の女性独裁者が、その年の、ノーベル平和賞・経済学賞の、ダブル受賞となったのである。
そう、世界中も狂い出し始めたのだ。
これには、さすがに、国軍の若者、特に、祖父や祖母を、「タコ・ゲーム」や「安楽死」で殺された若者達が、軍事クーデターを計画するのも頷けるではないか!
その実行は、1年後になるのだが……。例の、女性独裁者は、まだ知らないのだ。
タコ・ゲーム!!! 立花 優 @ivchan1202
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