〈増殖型〉の怪談!!前置きが長いんだよ!!

この怪談は増殖する。

まず行方不明の先輩が考案した「源・怪談」があり、それから〈胡乱サークル〉でネタを繰り返す度に一回また一回とコピーされて行く。

別にそれはどうでも良いのだが、気になるのはこの小説全体が「この怪異について何か知っている人に情報提供を求める」という形で締めくくられている点だ。

要するに読者が「ああその話はこういう経緯でェ〜」と解説を始めれば第二第三の「怪談」が再生産されるのである。

そしてその第二第三の怪談の末尾にも「情報提供求ム!」と記せばさらなるヴァリエーションが生まれ得る。

そうした怪しげな入れ子構造にはまるで〈昔話〉の系譜を調べるかのような面白味があると言えば言えるであろう。

一応「小説」として書いたが本作の肝はそうした〈昔話〉的な「噺」の要素である。

そうした観点で楽しめばこのあまりにも前置きが長すぎ、饒舌過ぎる文体も意味を成してくるのだ。

すなわちこの「小説」の狙いは「小説以前のフィクションの原型としての噺」への回帰にあるのである。

それはいいとして、この作品が怪談として怖いかは人に依るであろう。しかしおそらく多くの人はそこまで怖がらない。怖がらないのではあるまいか。

多分、この話は怖くないのだ。でも特有の「語り」は十分練られており楽しめる。
そういうわけで、私の「おすすめレビュー」的にはおすすめなのである。