いじめら令嬢の逃避行

神聖七家と呼ばれる七つの貴族達が治めるキボニア共和国。
この国には古くから伝わる迷信があった。
――曰く、灼眼の娘は世界を焼き尽くすさだめにある。

神聖七家の一つであるスケイプニール家の当主はその日、
自分の屋敷の前に一人の赤子が捨てられているのを発見した。
『可哀想に……』
心優しい当主は赤子を拾い上げたが、その目を見て顔をひきつらせた。
赤子は燃えるような赤い目をしていたのである。
当主はしばらく赤子を見つめていたが、やがて決意したように赤子を抱いたまま屋敷に戻った……

――これは、赤い目を持つ少女エステルがひたすら運命の重荷から逃げ続ける物語。
だって彼女は、死にたくないのだから。
たとえ死に戻りという最強の加護を持っていたとしても。