第13回空色杯【500文字未満の部】

かみひとえ

カナリーイエローな恋心

 友達のどーでもいい愚痴を聞き流しながら、なんとなく視線の片隅にキミの姿を入れてしまう。


 連休前のふわふわ浮わついた教室の窓際、そろそろ夏がやって来そうでやっぱり来ない、そんな中途半端な空に背を向けて、キミはワイシャツの袖をまくりながら男友達と何かを楽しそうに喋っていた。


 その屈託のない笑顔に、こっちまで口角が上がりそうになるのを必死で抑える。いかんいかん、こっちはシリアスだぞ。


 ちゃんと話したことはない。ただちょっと気になるだけ。別に好きでも嫌いでもないってば。


 ふと、キミと目が合った。合ってしまった。教室の喧騒が一瞬止んだ気がした。じわり、汗ばむ。


 でも、どうせ、わたしはその辺にいる小鳥。自信もなければ、希望もへったくれもない。もう明日にはキミに会えなくなる。


 道端に咲く可憐な黄色でも、ぎらつく太陽みたいな黄色でもなくて、少し緑がかった金糸雀の黄色、きっとそんな気分。小心者のわたしは無邪気に誰かの手の上にすら乗れやしないのね。


 そんなわたしの姿を見て、キミがふっと笑った気がした。くらり、目眩。


 ふ、ふふっ、そうだ、夏はこれからよ。こんなところでバテてる場合じゃない。


 まだまだ夏はアツくなるんだから!

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