深淵赤い妖花蠢く〈クトゥルフ短歌連作〉

楠本恵士

深淵赤い妖花蠢く

闇来たる閉ざされたるは洋館の深淵しんえん赤い妖花蠢く


はい部屋に深夜現わる異形に変わり果てたる隣人の顔


幻か雪山で見たアノ裸体身体からだは人で頭はサカナ


産気づく妻が生む魔界のタマゴかえる我が子は邪悪な神


亡き娘生きえらせる古き忌呪いじゅ死んだ肉体とり憑く魔物


幻聴か医師の診察異常はない声に続いて幻視怪物


腕生える肘のつけ根に女腕おんなうで呪いを受けて女が生える


亡き叔父の遺品整理で見つかった叔父の子供の魚人姿


呪われた村に入ったヨソ者は男は食われ女イケニエ


選ばれた都会は狩り異世界の魔のクトゥルフ狩りは学校


皮膚下の女の顔に魔が沈む掻いた皮から別の血の顔


死んだ友べつの何か入っている自分を狙う吸血牙


家族変ナゼ眼球2つだけナゼ腕と脚2本しかない


魂を外宇宙に引き抜かれ魔界に落ちて喰われて消える


禁断の書物のなか文字に封印邪悪じゃあくかげ禁忌開放


おぞましき心を持った人間が呪いを受けて怪異に変わる


身内殺人ころした家族バケ物にいつの頃から怪物家族


温暖化魔物のあるじよみがえる人を作りし真の支配者


妹が神のイケニエ依代よりしろに妹微笑む悪魔の笑い


人間は家畜扱い高次元人智を超えた収穫さい

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