想い想われ伝わらない⑫




数日後



―――そう言えば付き合った日以来思佑くんの心の声が聞こえなくなったな。

―――あれは一体何の現象だったんだろう?

―――流れ星に願って一日限定の特別な日だったのかな?


あれがなければ今もおそらくはただの幼馴染として日常を過ごしていただろう。 今までずっとそうだったのだ。 それが悪いというわけではないが、今は一歩踏み出せたことを本当によかったと思っている。

それに今思えば流れ星が叶えてくれたにしてはどこか意地悪な心の声の聞こえ方だった気がする。 もっともそのおかげで心が揺さぶられ告白することができたのは間違いない。

学校帰り一緒に下校しながら思佑に尋ねてみた。


「ねぇ、思佑くん。 前にゲーセンへ行った時のこと憶えてる?」

「カップル専用プリ機に入った時のこと?」

「だ、だからあれはカップル専用じゃないんだって!」

「はいはい。 じゃあ俺たちはまた行くこともないか」

「・・・カップルになったからそれはそれでまた行きたいけど」

「素直でよろしい」

「そ、それはカップルじゃないのとカップルになったのでプリを撮る時の感情が違うと思ったからで!!」

「顔が真っ赤で可愛いよ、愛海」

「~ッ!」


恥ずかしくなり涙目で思佑を睨む。


「というより丁度俺もそう思っていたよ。 今からでもその願いを叶えにいっちゃう?」


そういうことでゲームセンターへ向かった。 あの日以来二人は思ったことを素直に口に出すようになった。 おかげでいい関係が築けている。


「って、私が言いたいのはプリのことじゃないんだけど! 占い結果のことだよ!」

「占い結果?」

「そう! 実はあの占い、当たっていると思わない?」


絶対にここで思佑は首を傾げるだろうと思っていた。 占いでは“別れた方がいい”と出ていたのに今は一緒にいるのだから。 だが思佑は笑顔で頷いていた。


「あぁ、そうだね。 当たっていると俺も思ったよ」

「え、どうして!?」

「何、その反応? 真逆過ぎて困るんだけど」

「だって私たちは付き合っているし・・・」

「“今の相性は最悪。 この状態が続くのなら別れた方がいい” この状態、って何を示していると思う?」

「・・・」

「互いに互いの声が届いてしまうことだよ。 きっと心の声が届いていたのは俺だけじゃない。 愛海も俺の心の声が届いていたんじゃない?」

「そう・・・! どうして気付いたの!?」

「告白してくれた時に気付いたんだよ。 今はもう互いを想っても互いの心の声が聞こえなくなった。 もうあの状態じゃないから今の俺たちの相性は抜群にいいっていうことさ」


それを聞いて愛海は嬉しかった。


「やっぱり伝えたいことは心で思うだけじゃ駄目だね。 口に出して言わなきゃ伝わらないこともある」

「そう。 でもなかなか進展しない俺たちに流れ星は力を貸して後押ししてくれたんだね」

「途中で思佑くんらしくない声が聞こえたのは、それでも進展しない私たちに怒っちゃってそうしたのかな」

「でも反対の声が聞こえたおかげで逆に背中を押された感じがしたから、ある意味それも俺たちにとってよかったのかもしれないね」


やはり思佑も愛海と同じように考えていたらしい。 ただ一つだけ疑問があった。


「あの時の心の声って・・・。 思佑くんが本当に思ったことだったの?」

「それは俺も気になってた。 ちなみにどう聞こえた? 俺は美恋さんに連れられて離れるのを止めないのは男らしくないとか、幼馴染の関係も終わりとか・・・」

「いやいやいやいや!! そんなこと思ってないよ! 私は他の人を優先するのは有り得ないとか、待つのも面倒だから帰ろうとか・・・」

「流石に帰ろうだなんて思わないって! ・・・ただ断ってほしかったとはちょっと思ったかもしれない」

「そうだったんだ。 ・・・いや、でも、そりゃあそうだよね。 ごめんね?」

「いいよ。 愛海も俺に引き止めてほしかったってちょっとは思った?」

「あー・・・。 ちょっとね?」

「あはは、そうだよな」


話しているとゲームセンターへと着いた。 ゲームセンターの前で立ち止まる。


「占いのリベンジしてみる?」

「してみる!!」


占いの結果は『お二人の今の相性は最高です。 この状態が続くのなら今後も末永く幸せになることでしょう』と出て、カップル専用プリクラで初めてのキスをすることになるのだった。






                               -END-



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想い想われ伝わらない ゆーり。 @koigokoro

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