もしアニメキャラが現実で彼女になったら~彼女が化物扱いされた上にビジネスに利用された!こんな現実世界許せないのでアニメの世界に駆け落ちします~
勇者れべる1
もしアニメキャラが現実で彼女になったら
旭川玲ことレイは人気アニメの人気ヒロインだ。
運動もできて勉強もできる、容姿もモデル並で茶色の長髪を今日もたなびかせている。
アニメ好きであるタケシは今日も自室のPCでその姿を液晶越しになんとなく見ていた。
「あーあ、レイみたいな娘が恋人だったらなぁ」
「その願い、叶えてあげる。あ、最初から恋人状態がご所望みたいだから好感度はMAXにしといたから」
「え!?」
どこからともなく少女の声がした。
周囲を見渡すが人の姿はない。
「気のせいか……ん?」
するとどこぞの井戸の幽霊映画の様にテレビから人が這い出て来る。
その異様な光景を見たタケシは腰が抜けて動けないでいた。
「な、なんだお前!?」
「失礼ね、私を知らないの?旭川玲、レイでいいわよ、ダーリン♪」
「え?レイってあのアニメキャラの!?」
驚くのも無理はない。
アニメキャラが現実に現れたのだ。
現実と二次元の区別が付かないとかそんなチャチなもんじゃない。
本当に”次元”が違うのだ。
「まあいいわ……それにしても殺風景な部屋ね」
「そ、そうだね」
タケシは驚くしかなかった。
「これからはずっと一緒だね、ダーリン!」
何かに好感度を弄られたレイは既にタケシにガチ恋していた。
そしてレイは思いっ切りタケシに抱き着いた。
二つの柔らかい膨らみがタケシの胸に当たる。
「あああああの、当たってるんですけど!」
「あててんのよ」
「これは……たまらん!」
童貞だったタケシには刺激が強すぎたのか動揺しまくるタケシ。
この後は一緒にレストランで食事してあーんして貰ったり腕を組んで街を歩いたりと恋人ライフを満喫していた。
しかしタケシ達二人を見る人々の視線は得体のしれない何かを見るような目であった。
それは帰りにコンビニに寄った時に明らかになった。
「おいおい、なんだよあれ……CGか何かか?」
二人組のカップルがスマホ片手にタケシとレイの二人に近付いた。
現実の人間の横にアニメキャラが立っているのだ、当然である。
二人は、まじまじとレイをのぞき込んだ。
「失礼ね、現実の人間よ」
まるで自分を証明するかのように両手を男の方の肩にやる。
男は確かに感触を感じた。
「こ、これ着ぐるみとかじゃなくてマジなのか?す、すげぇ!写真撮らなくちゃ!」
「あ、ちょっと!写真は困ります!」
「いいじゃない、写真位。私慣れっこよ?」
制止するタケシに対し微動だにしないレイ。
アニメの世界ではそうだったのだろうが、ここは現実世界だ。
アニメのキャラが現実にいるなどと起こり得ないのだ、普通は。
しかし現実でそれは起こってしまった。
アニメキャラのレイと対比されるように一緒に写ったタケシがレイの異質さを際立たせる。
その写真がSNSに拡散され現実の人々の目に晒された。
その見出しは「現実世界にアニメキャラ!?」だった。
レイが人気キャラだった事もありネット上では大盛り上がりだ。
「ふふん、凄いでしょ私の人気」
「う、うん……」
自分の人気に鼻を鳴らすレイ。
どうやらタケシの杞憂だったらしい。
しかし……
「現実にアニメキャラがいる訳ないだろう、jk(常識的に考えて)」
「夢が無い奴だお。レイたんが現に現実にいるというのに」
「あのなぁ、こんなのCGかトリックか何かに決まってるだろ」
こんな感じのやりとりがあちこちで行われていた。
そして現実世界のレイがCGだと疑われてSNS上で議論が巻き起こっていた。
「スマホ貸して!」
それを見ていたレイは気に入らないのかタケシのスマホを強引にぶんどる。
そしてスマホで自撮りしつつ机の上のマグカップを持ち上げた。
そして大手SNSのZにその動画を投稿した……タケシのアカウントで。
見出しはこうだ「現実にいる証拠よ!」だ。
ああ、やってしまった、これで現実に干渉できたので現実に肉体が存在すると証明されてしまった。
だがマグカップから背景から何から何までCGだという可能性も十分にある。
生成AIが発達した現代の技術なら素人でも多少の金を出せば可能だ。
そしてそのわずかな疑念がレイの怒りを再び呼び起こした。
「もう怒ったわ!こうなったら強行手段よ!」
「ちょっとレイ!もうやめようよ!」
「私の存在が否定されたのよ!?許せる訳ないじゃない!」
「そ、それはそうだけど……」
「よし、しっかりZで告知してっと……さあ、いくわよ!」
タケシは流されるままレイに手を取られ家の外に出た。
その先は人手の多い駅前だった。
レイは大きく息を吸い込むと大きな声でこう叫んだ。
「アニメのイベントでーす!握手会やってまーす!」
なんだなんだと注目を集めるレイ。
既にSNSで話題になっていた現実世界のレイは注目の的だった。
スマホでパシャパシャと写真や動画が撮られ、握手会には長蛇の列ができている。
タケシはというと……整列の呼びかけをしていた。
この握手会の目的は勿論レイが現実にいるという事実の証明である。
実際に触って確かめてみれば現実に存在する事は確定的に明らかだからだ。
「一列に並んでくださーい(なんで俺がこんな事を……)」
「すげぇや!このCG、ちゃんと現実にいるみたいだ!」
握手会に参加した青年が驚いている。
「だからCGじゃないっての」
「えっ、それって……」
レイがこめかみをピキらせながら青年の手を握り手に少し力を入れる。
青年はそれに怒るよりもアニメキャラに感触がある……現実にいるという事態にただただ驚いていた。
握手会はSNSで情報が拡散され多くの人を集め夜遅くまで続いた。
さすがにレイも疲れたのかふらついている。
アニメキャラも疲れるんだなとタケシは思いつつレイと家路に付いた。
「さーて、握手会の効果はっと」
レイがタケシのスマホを手に取りZを確認する。
しかし世間の反応はレイの予想を裏切った。
見出しはこうだ「化物現る」だ。
「目が大きすぎるだろwwwバケモンかよw」
「あの目じゃコンタクトレンズも付けられないわよねぇ」
「鼻が点みたいで小さすぎる」
「新手の宇宙人か何か?」
「現実のアニメキャラ超きめぇ!」
世間の反応は散々だった。
大きな目、構成の違う目、極小の鼻……現実の人間と違うソレはアニメやゲーム、漫画等で二次元キャラを見慣れていない人にとってレイは「化物」だった。
特にあの握手会、オタクの多い秋葉原とかならともかく、普通の街でやったのだ。
そしてこのSNS案件には単純に話題の次世代CG技術がどうのこうのとアニメ以外の所で人気に火が付いてるため、レイの出ているアニメやレイ自体のファンが少ない。
今回の握手会に参加したのもアニメに興味の無い野次馬が殆どだった。
アニメ大国日本と言われているが、この国ほど二次元やオタクに風当たりの強い国はない。
オタクでない彼らはただ異質であるレイを歓迎せず糾弾した。
「この私が化物ですって!?」
「レイ、落ち着いて」
タケシが憤慨するレイをなだめる。
しかし皆の気持ちも分からなくもない。
体の、特に顔の構成が現実の人間と違うのだ。
そういう反応をされても仕方が無い。
「でも納得いかないわよ。この超美少女を捕まえて化物だなんて……」
「アニメの世界とこっちの世界とでは美的感覚が違うからなぁ……」
こうなったらこれしかない。
タケシは意を決するとスマホを手に取った。
連絡先はレイの登場しているアニメを作っている制作会社だ。
(このアニメは原作の無いオリジナルである)
「あの~、俺レイの彼氏のタケシと言いますけど……あ、切らないで!」
アニメキャラの彼氏とかいきなり言って来たら頭のおかしい人扱いされても仕方が無い。
俺の必死の説明と例のSNSで拡散されてる写真のせいもあり、ようやく信じて貰うことが出来た。
そしてアニメ会社の社長室に通して貰うタケシとレイ、そこには一人の中年男性と一人の女性がいた。
「彼女がウチのレイか……よくできてる」
「ちょっと、人を物みたいに言わないでくれる?」
「いや失敬、しかし本当に画面から出てきたようだ、そうだろう?美咲」
「は、はい。本当にレイちゃんそのものです」
レイと対峙している中年のスーツのオールバックの男性は中村恭一、このアニメ制作会社の社長である。
美咲と呼ばれた女性は芸名大空美咲、レイ役の声優である。
二人ともレイの生みの親と言っても差し支えない存在であった。
恭一はともかく自分と同じ声の声優に驚くレイ……と思ったが意外にそうでもない。
声優さんの素の声と言うのは元々アニメ声でキャラその物だとかそういうのでもない限り、アニメやゲームのキャラの声とは一致率60~70%位だろう。
演技して初めてキャラの声になるのである。
その辺は声優ラジオとか聞いてるとなんとなく分かる。
「あなた、本当に私の声優?」
疑いの眼差しを美咲に向けるレイ。
美咲は目を瞑り深呼吸するとその口を開いた。
「私は旭川玲!どこにでもいない超美少女女子高生よ!」
「あ、それ私の台詞!」
アニメの名台詞を披露する美咲。
重要なのはその声がレイだと言う事だ。
「このままレイの声で喋り続ける事もできるけど?」
「いや、いいわ。なんか頭痛くなってきた……」
自分と同じ声の人間が目の前にいるというのはなんとも気味が悪いのであろう。
恭一は二人の出会いを見届けると今度はタケシの方に向き直った。
「ところでどうだい。二次元の女性を彼女にした感想は」
「そりゃ夢見たいですよ」
恭一に嫌味なく言われたタケシは正直な感想を述べた。
しかしもう一方で正直な感想があった。
「ただ……」
「ただ……?」
「周囲の目が気になってしまって……皆断りなく写真撮るしジロジロ見て来るし……」
「そりゃまあ、そうだろうね」
現実の人間から見れば人間と姿形が異なるレイは宇宙人の様な異質な存在なのだ、無理もない。
そして宇宙人がいるのであれば皆写真や動画に撮りたくなる、浅ましいがそれが人間心理という物だ。
「その懸念、私が解消してあげようか?」
「え!?」
次の日の夜、ネットやテレビのニュースで恭一の発表が大々的にされた。
彼女は正真正銘の旭川玲であり会社の所有物である、と。
「恭一さん、なんなんですかこれ!?」
憤慨したタケシは恭一にさっそく電話を入れる。
恭一はウィスキーのグラスを片手に余裕の表情を浮かべていた。
「まあ、落ち着きたまえ。彼女を我が社の所有物とする事で彼女の人権が守られるのだ。戸籍も無いんだろうし悪い話じゃあるまい?」
「そ、そういう事ですか……よかった」
「よくないわよ!どうせ私を利用する気なんでしょ!」
「無論ただとはいかないさ。弁護士費用も世論操作も金がかかる。君には我が社の広告塔として働いてもらう。それにタケシ君にもお金が必要なんじゃないかい?」
「ううう……それはそうですけど」
タケシはネット上で悪い意味で有名になり過ぎていた。
アニメを良く知らない者からは異質だと気味悪がられ、アニメを知っている者からは嫉妬の対象になる。
タケシの現状を好意的に見てくれる人は少なく、バイトでさえどこも雇ってくれる所は無かった。
「ダーリン……。分かったわ、あなたの言う広告塔とやらになってあげる」
「レイ……」
世間に認められた彼女を「化物」扱いする輩はもういない、いても社会的に揉み消されていた。
恭一が裏から手を回してSNSの運営に抗議して該当書き込みを消させたのだ。
無論反論する人もいるだろうが企業から「名誉棄損で訴える」と言われたら大抵の人は引き下がるであろう。
それでも引き下がらない相手には実際に裁判しそして勝訴した。
個人が企業相手に裁判して勝てる訳が無い。
これも宣伝になると裁判のドキュメンタリー番組まで作らせネット配信やTV放送したのだ。
もはや向かう所敵なしといった感じだ。
そして盤石の態勢を整えてレイの多忙な日々が始まった。
世界唯一の現実世界のアニメキャラとして注目された彼女はバラエティ番組からCDデビューしての音楽番組、CMからモデル業まで幅広くその役目をこなしていった。
元々万能ヒロインとしての設定があった為、レイはそつなくその仕事をこなしていく。
しかしタケシと会える時間は次第に短くなる一方であった。
「レイちゃんは彼氏いるの?」
バラエティ番組の司会役がレイに尋ねる。
「設定上はいません(ダーリン、会いたいよ……)」
危うく炎上しかける発言だったが、レイにとってそんなことはどうでもよかった。
今は少しでも早く仕事を終えてタケシに会いたい、その一心からこぼれた一言であった。
「レイ!」
バタンと控室の扉を勢いよく開くタケシ。
そこにはタケシの顔を見て満面の笑みを浮かべたレイがいた。
「ダーリン!」
「レイ、すまない。こうなるとは思わなかったんだ……二人で逃げよう」
タケシがレイの手を掴んだその時である。
再び控室の扉が開かれた。
そこにはアニメ会社社長の恭一と声優の美咲がいた。
「そうは問屋がおろさんよ。彼女には次の仕事があるんでね……そう政治界への進出だ」
「レイを政治家にするんですか!?」
「いやよ!どこまで人をダシにするつもり!?」
「今やレイの影響力は世界中にあると言ってもいい。それを利用しない手はないだろう?私はただのアニメ会社の社長では終わりたくないのだ。この国の陰の実力者になりたいのだよ。」
「だからって本人の意思を無視していい訳が無い!」
「ダーリン……」
恭一に食い下がるタケシに感動するレイ。
しかしその次の言葉が状況を変えた。
「ふむ、やはりこうなったか。では第二プランでいこう。美咲」
「はい」
恭一が腕輪の様な物をかざすとそこになんと等身大のレイが現れた。
無論それはただのホログラムであり立体映像だ。
そして美咲がマイクで話始めるとそれに合わせてホログラムのレイの口が動き出す。
「私はこれまでのレイをホログラムだと発表するつもりだ。これからのレイの仕事はこのレイに任せて貰う」
「レイから仕事を奪うって事ですか?」
「二人が生活するに十分な金はだそう。本物のレイが仕事から解放されるんだぞ?いい事じゃないか」
「まあ私はダーリンと二人でいられるならそれでいいわ」
「じゃあ決まりだな。ここにサインを」
恭一が出した書類には
・レイが本物のレイであると主張しない事
・世間に本物のレイの存在を公表しない事
・レイの存在を隠して生活する事
・上記3点を厳守する限り生活費や戸籍や国籍、住民票の取得など日常生活に関わる物は用意するし法に関わる問題が起きた時は対処してくれるとも書かれていた。
当時は何とも思わずサインしてしまったが、今となっては後悔もしている。
しかし現実の世界でレイが生きるためには恭一の庇護も必要な訳で、そう考えるとサインする事は必然だった。
しかしそもそもホログラムである事になったレイに参政権があるのか?戸籍は?人権は?国籍は?政界進出への壁は高い様に見えた。
しかし答えは簡単、声優の美咲がレイの姿で出馬する、それだけだ。
現実にいると認められた日本国籍の成人の人間なのだから普通に出馬できる。
そこになんの問題もなかった。
いや現行法であるにはあるかもしれないが、そこはレイの影響力と金の力でどうにでもなった。
新しい法律が出来た、俗に言う電子人物選挙法の制定である。
建前上は増えすぎたVTuberの出馬を許可する法律だったが、それは恭一の思惑通りアニメキャラも声優が条件を満たしていれば出馬できるという法律であった。
まあ恭一が議員達に山吹色のお菓子(賄賂)を渡して作らせた法律なので当然だが。
それから数年後……
「無事当選致しました~。これからは政治業界で頑張ります!」
テレビのモニター前にはアニメの中では絶対に言わない台詞を偽レイが言っていた。
選挙では元々のアニメの人気の組織票は元より、これまで稼いだ世界規模の人気が票を集めていた。
国会議員に当選した偽レイは選挙カーの上でテレビのカメラに手を振っている。
恐らく選挙カーの中に声優の美咲がいるのだろう。
それをテレビで見ているタケシと本物のレイは複雑な気持ちだった。
「私がゆくゆくは総理大臣か~」
「なりたいのか?」
「全然?私がやる位なら徳川家康を異世界転移させてやらせた方がマシよ」
「なんだその例え」
思わず笑ってしまうタケシ。
タケシとレイは恭一と偽レイとは一歩引いた世界にいるのだ、もう関わる事はない。
しかし……
あれからしばらく経った。
テレビを付けると政治の討論番組に国会議員となったレイのホログラムが出ていた。
「ふぁあああああああああっく!それは違うわ!」
聞くに堪えない差別的な用語やスラングが連発されてる。
「レイはそんな事言わない!」
SNSのZで必死に擁護するタケシ。
しかしタケシの使っていた本アカウントは恭一に没収されたため、現在は新規アカウントで投稿している。
昔のタケシのアカウントならレイの情報の大元だった事もあり信憑性もあったが、今はまっさらなアカウントでなんの説得力も無い。
それどころかかなり嘘くさかった。
「捨て垢で単発とか香ばしいなw」
「現に言ってるだろ、しかしF語連発してる彼女もいいな!」
「KAWAII!」
こんな感じでSNSではそれがバズり、一種の流行になっていた。
「私あんな事言わないわよ」
「わかってるさ」
肩を寄せ合う二人。
タケシは憤慨していたが、タケシと二人でいられるだけで幸せなレイにはどうでもよかった。
だがレイが汚される様で我慢ならなくなったタケシは恭一に直談判した。
しかし自身の所有物で何しようと勝手だと取り合ってくれないし、レイとの生活も例のサインした書類もあるからレイの正体を明かす事もできない。
声優の美咲もこの路線には反対したが、世間は声優変更に寛容だとレイの声優を降板させられてしまった。
例の書類にサインしてしまった事に責任を感じたタケシだったが、もうどうにもならなかった。
そして現実は更に加速していく。
偽物のレイの姿は現実世界のあちこちで見る様になり、本物はアニメ調の体が見えない様に変装しないと外に出れない程であった。
「なんで本物の私がこそこそしないといけないのよ……」
「しかたないよ、偽の方が今は有名なんだから。それにバレたら大変だ」
この様にタケシとレイはコンビニ一軒行くのもはらはらの冒険物だった。
そして恭一はこのホログラムを別のアニメキャラと声優を使ってビジネスを展開し始めた。
もうそこには「アニメキャラが現実に来た」という現実は無くなっていた……
更に数年後、恭一はというとこのホログラムキャラを中心としたアニメキャラだけの政党「アニメで世界を作り直す党」こと略してA党を作りそれなりに日本の政治に影響力を持つ様になった。
出資者は世界中のオタクやアニメや漫画、ゲーム等の二次元コンテンツの制作会社、そしてユーザーであるセレブなオタク達だ。
金と権力を得たのは言うまでもない。
あれから数十年、年を取らないアニメキャラのレイは老人になったタケシの前にいた。
偽レイを始めとするホログラムブームも終わりやっと二人の落ち着いた生活が始まろうとした矢先である。
「うっ!?」
「ダーリン!?」
胸をおさえるタケシに駆け寄るレイ。
心臓マッサージもした、人工呼吸もした、AEDだってやった。
しかしレイの救助も虚しくタケシはそのまま息を引き取った。
レイは大粒の涙を流しながら自分を現実世界に連れて来た何かに言った。
「神様でも女神様でも誰でもいい!私とタケシをアニメの世界に戻して!」
「いいわよ。あ、ちなみに私女神だから」
見知らぬ少女の声がした。
次の瞬間レイは見覚えのある世界にいた。
かつて自分のいたアニメの世界である。
そしてその傍らには転生した青年姿のタケシがいた。
レイは元のアニメ世界に異世界転移を、タケシはアニメ世界に異世界転生したのだ。
タケシは生きている、アニメの世界では定められた死亡シーン以外で人は死なないのだ。
しかもこのアニメは時間の進まないギャグアニメで現実的に見れば皆不老不死の存在である。
タケシとレイは第二のアニメの世界で平穏に生きていく……はずだった。
「レイ、この……人?みたいなのはナニ?」
レイの友人であるリカが尋ねる。
そう、このアニメの二次元世界において、特に萌えアニメの作画の世界において、現実世界の顔付きは異質だったのだ。
しかし現実と違うのはそれに全く人気が無い事である。
それ程話題にもならずに事は終息した。
そして現実世界では―
「社長!百合アニメに男を挟むなと批判が殺到してます!」
「ええい、制作時にちゃんとチェックはしたのか!何故いないキャラがいる!」
現実世界の恭一は殺到する苦情に四苦八苦していた。
レイの出ているアニメ番組の世界に紛れ込んだタケシが、
放送されたアニメ番組に登場しているのである。
これは女神の力によるものであり、アフレコしてないとか制作段階でいないとかは関係ない。
そしてこの頃の恭一はまだタケシや本物のレイの存在は知らない。
だから現状意味不明と思うのも仕方が無い。
その頃にまで女神が時を戻してくれたのである。
「ダーリン……」
「レイ……」
アニメという異世界で寄り添う二人。
その後ろにはもう一人のレイが立っていた。
彼女も本物のレイである。
女神がアニメからキャラがいなくなったらアニメが続かなくなると、レイのコピーを現実世界に送り出したのだ。
「言っておくけど、私の顔と身体で変な事しないでよ?コピーさん」
「いやよ。私家族でサッカーチームを作るのが夢なんだから」
火花をバチバチ散らすレイとレイ。
アニメの世界で暮らすのも大変だなぁと思ったタケシであった。
そして二人のレイにまたもや苦情が殺到している現実世界であった。
「人間っておもしろっ!」
この状況を一番楽しんでいたのはこの状況を引き起こした元凶の女神であった。
こんな事した理由?そんなものはない、ただの女神のきまぐれである。
今度はあなたの身に気まぐれが起きるかもしれない、タケシとレイの様に……
もしアニメキャラが現実で彼女になったら~彼女が化物扱いされた上にビジネスに利用された!こんな現実世界許せないのでアニメの世界に駆け落ちします~ 勇者れべる1 @yuushaaaaa
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