第40話 ギルド総出の調査
ギルド総出の調査当日。
レイたちは、とりあえずまずは変装せずについて行くことにした。アリバイ工作的な意味合いが強いのに変装してたんじゃ意味がない。
(それにどうせ、戦うのは高ランクの冒険者たちだし、失態を見られて問題になることもない)
自分が常にどれだけ訳のわからない行動で周りを巻き込んでいるのか知らず、レイは一人そう思っていた。
乗合馬車でダンジョンにたどりついたのは朝早くで、レイはあくびをかみ殺していたけれど冒険者たちは結構ピリついている。こんなところであくびをしたら首を切り落とされるな、とレイは全力で口を閉じる。
ノヴァは寝ていた。
レイの肩を枕にして涎を垂らしている。
(ちょっとぉ! 僕の努力を返せ!)
レイが驚愕していると、ネフィラがノヴァの耳を引っ張った。
「痛っ! 痛い痛い! 何すんのよ!」
「起きてください。もうすぐ着くので」
「もっと他の起こし方あるでしょ!」
(ヤバい騒ぐと怒られる! 冒険者たち怒らせたら、僕なんかきっと逃げ出すときとかに囮に使われるんだ!)
戦々恐々としていると隣に座っていた長髪を縛った男がレイの耳に近づき小声で言った。
「余裕ですね。さすがです。いざという時はお願いします」
いつかオーガから助けたBランクの男ウェイレンだった。
レイは顔を真っ青にした。
(ひいい! 皮肉! やっぱり僕のこと囮にするんだ! 僕あの時あたふたしてただけなのに!)
「あ……あんまり期待しないでください」
「ああ、まあそうですね。お忍びですからね。あなたの手を煩わせないように俺たちも全力でやりますよ」
(まさか、僕がお忍びで魔界からきてるって知ってるの!? ヤバい! まずい! どうしよう!)
「あ、あああ、あの、お願いなのでそのこと誰にも言わないでください」
「心配せずとも言いませんよ。いままでだって黙ってきましたし」
「対価は?」
「は?」
「言わない代わりに何かしろって要求はないんですか?」
ウェイレンは一瞬固まってそれから笑った。
そこで馬車がダンジョンに到着してぞろぞろと冒険者たちが降りだしてしまったのでレイは返事を聞きそびれる。
被害妄想が加速する。
(うわああああ! きっと信じられないような対価を要求するんだ! あの顔は「どんな対価を払えばいいかくらいわかってるだろ?」って顔だ! わかんないです! 僕わかんない!)
肩をノヴァの涎で汚したままレイは泣きそうだった。ノヴァが心配そうにレイの顔をのぞき込んで。
「そんなに涎で汚されたのが嫌だったのかしら。ごめんね」
とか言っていた。アホの子。
魔族とは言え、所詮十二歳である。
ダンジョンの周囲は酷い匂いがしていて、報告の通り、上階からモンスターが降ってきているようだった。冒険者のうち炎系統の魔法を使える者たちがモンスターの死体を燃やし、洗浄魔法で病気を防いでいく。
ネフィラがそれを見ながらレイに近づいてきて、
「肩の涎、洗浄魔法で綺麗にしてあげます」
「ありがとう」
「そしてもう片方の肩にわたしの涎をつけます」
「何その新手の嫌がらせ」
と言うか、ネフィラに関しては虐めるとき服に噛みついてくるので、レイの服は結構な頻度でネフィラに涎をつけられている。今更改めて唾をつける必要などない。二つの意味で。
「それより、ヤバいよ。もしかしたらあのウェイレンって長髪の男に僕たちが魔族だってバレてるかも」
「殺しますか?」
「やめて! 何考えてんの? ……口止め料で何か欲しいみたいなんだけど解らないんだよね。探ってもらえる?」
「解りました」
「ねえ何コソコソ話してんのよ」
ノヴァは不満げに言った。
「と言うか、さっき引っ張られた耳痛いんだけどどうしてくれんの? 防御力高いあたしでも痛いってどういうこと? どんだけ全力で引っ張ったのよ」
「そうしないと痛くないでしょう、あなた」
「
「不用意な発言は慎んでください。切り落としますよ」
「ぷはっ! 何よ怖いわよ!」
ネフィラはノヴァの口から手を離すとレイに近づいてきて言った。
「ノヴァから漏れた可能性が高いですね」
「そうだね。注意しよう」
「わかりました」
そんな勘違いを抱えながら、レイたちはダンジョンへと入っていく。
レイヴン・ヴィランは陰で生きたい~低レアキャラ達を仲間にしたはずなのに、絶望を回避してたらいつのまにか最強に育ってた、目立つな~ 嵐山 紙切 @arashiyama456
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