君に贈る、ことばの花束。
@tsuji-dou
第1話 DAY1 唐突なプロローグ
最近、日記代わりに小説投稿を始めた。日記と言っても、昔の思い出話が主で、どちらかというとエッセイに近い代物だ。ただ自分の中に閉じ込めているのも何話か書いたところで、昔の恋愛話をネタにしたものが頭に浮かび、ついそれを書いてしまったからか、夢の中に中学時代に初めて付き合った女の子が出てきた。
彼女の名前は・・・「トモ」にしておこう。
トモは、今でも時々連絡を取ることがある。ただ、ここ最近は連絡が途絶えがちだった。「丁度いい機会だから連絡をしてみよう」と思い立ったのが、今回の始まりである。
「もしもし」
「・・・・もひもひ」
「?声が変だけど、大丈夫?」
「・・・らいじょうぶ」
「・・・また体調が悪い?今病院?」
「ひがふよ~」
「もしかして、なにか口にチューブか何か入れてる?」
「んーん、おくすりのふくさよう~」
合点がいった。トモは何年も前に腫瘍が見つかり、そのたびに入退院を繰り返していた。今回もきっと治療中なのだろう。それでも、こんな感じで話すのは今までに、ない。
「じゃあ、家?」
「うん。きのうかえってきたの~。まんなかのむすこのけっこんしきがあるから~」
トモはいろいろあって再婚しているので、本当の息子さんではないことは知っている。ちなみに僕もそうだ。お互いに「タイミングが合えば、一緒になってたかもね」とか話したことがある。でも、そうはならなかった。
今はお互いのパートナーがいて、家族がいる。お互いそれを大事にしていることは間違いない。トモと僕は未だに下の名前で呼び合う。記憶の中の大事な部分に常に在る人。そんな人は男女や年齢にかかわらず何人かいるけど、彼女もその中の一人だ。
「そーいやさ、今日夢に出てきたから、電話したんだよ?中学の時のこと、覚えてる?」
「おぼえてるよ~・・・あのね~わたしもこのまえゆめみたよ~」
あのね。いっぱい、キスしてた。多分あなたとが一番。
瞬間、脳裏をよぎる、否定したい言葉。
今回で、もうしゃべれなくなるかもしれない。
多分、もう時間はそんなに残されていない。
何かできることはないか?
家も知らない。
会うことはかなわない。
だったら・・・
思いついたことを飲み込んで、トモとの会話に戻る。
「・・・そっか。いつまで家にいられるの?」
「ごーるでんうぃーくまでかな~」
「わかった。じゃあ無理しないように。また連絡する。」
「は~い」
今日が4月22日。
「GWまで」は終わるまでなのか、途中までなのかを指すのか、ちょっとわからないけど、あの様子だと、いつ体調が悪くなって病院へ戻ってもおかしくない。そうなれば連絡が取れなくなる・・・・。
多分、確実に家にいると考えられるのは、GW突入前の今週中だろう。
僕は、トモとの物語を書くことに決めた。
別に文章に自信があるわけではないけど、今の自分が彼女に贈れるものを考えたとき、トモと僕のことを忘れていないこと、大事にしていることの証を、残したいと思ったから。
君のあの時の笑顔は、今でもちゃんと覚えている。
君のちょっと舌足らずで明るい弾んだ声も、
忘れることはない。
「カクヨム」なら、グーグル検索でヒットすることを確認した。
ラインで彼女にも伝え、渡すことができる。
残された時間は、あと3日。
仕事と家庭と睡眠時間の調整をしつつ。
さあ、ここからは
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