第5話 DAY5 二人の「if」~もしも君と一緒にいたら~
・・・こんな時に明日出張が入るか。
前倒しするしかない。現在、4月24日。
トモへ。
ずっと君は電話やメッセージをくれるたびに、
「なんであなたと一緒にいなかったんだろう」
「また夢に出てきたよ」
「ママが会いたいって言ってた」
「今のダンナにも、あなたのことは話してる」
って、全然悪びれることなく、ほんっとにあっけらかんと言ってくる。
僕からしたら、毎回豪速球でデッドボール食らわされた気分になる。
何なんだよ、全く。
だから、今から書くのは「if」だ。
僕と君が、あのままずっと一緒にいたら。
トモが病気にならなかったら。
ここからは、僕の勝手な想像。
トモが描くものと違っていても、どうか笑って許してほしい。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
高校卒業後。
トモと僕は、結局地元に残ることを選択した。
なんだかんだ言っても、二人が出会ったこの土地が好きだったから。
トモは短大を出てすぐ、「留学に行ってきたい!」というので、
ちょっと心配だったけど、笑って見送った。
「本当に大丈夫って思えたか?」 だって?
そりゃ、中学を卒業したあとはちょっと離れた時期はあるけど、結局は元のさやに納まってしまった。どこかに行っても、帰ってくると信じれる。
・・・・信じていいよね?
僕とトモは、就職後ほどなくして結婚した。二人とも自宅から早く出て二人の時間と空間を作りたかったから。二人とも仕事をしているので、家事はできる方ができることをするのが、約束だ。僕も料理とかは苦にならないので、特に問題はない。
僕もトモも、どちらかというと呑気でおっちょこといなところは似ている。
ケンカも時々するけど、結局相手のことが気になって、すぐ謝って元に戻る。
まあたまに・・・少しこじれたときは、きまってトモのお母さんが来て、
「はいはい、なにまたバカなことでケンカしよんね~、ほら二人とも座りんさいや~」
・・・とか言ってどうにかしてしまう。あののんびりしたペースで言われると、なんかケンカしてるのもバカバカしくなってしまう。
二人とも子どもは好きなので、子育ても二人で見る。イベントも必ず二人で参加だ。水泳は二人が出会ったきっかけの競技でもあるし、スイミングスクールには通わせているけど、別に選手になるかどうかは、子どもに任せている。とりあえず、社会にメーワクになりそうなことは力一杯叱るけど、勉強とかは・・・あんまりガミガミ言うのは控えようと、二人で話して決めている。ただ、「やりたい」と自分で言いだしたことは、「自分で責任を持ってやれるか、やる前によく考えなさい」とだけは言うようにしている。何でもかんでも手を付けては放り出すような人間になってくれたら、困るから。
子どもが巣立ち、年月を重ねても、二人でのんびりした毎日をすごしている。
TV見ながら何気ない会話を繰り返す毎日。
時々、トモが唐突に「~したい!」「~へ行こうよ!」と言い出して、
僕は「ハイハイ」と言って一緒に動く。
その繰り返しだ。
でも「それで十分」「それが幸せ」と思える毎日を、
トモと僕は過ごしている。
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・・・・多分、こんな日々を送っていたんじゃないかな?
トモ、君はどう思う?
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