第4話 DAY4 二人の終わり

4月24日。急な仕事が入ってきている。

これ、睡眠時間を削らないと間に合いそうにない・・・



タイトルだけ記入して、しばし悩む。

・・・・これ、トモが見たらどう思うだろう。

でもこれも、君との記憶だと思ってる。

もし読みたくなかったら、読まなくてもいいよ。


先に書いとく。あの時はけっこうしんどかったんだぞ?



部活の大会が9月に終わり、僕たちは本格的に受験一本になった。

トモと帰る日は増えたものの、自然と高校の話、将来の話になっていく。

トモは地元では有名な、大きなお寺(なんと弘仁2年(811)開基らしい)の娘さんというのは、付き合い始めてから知ったことだ。


高校選びは迷走した。

そもそも広島の高校事情がよくわかっていない僕は、最初はトモが市内6校に行きたいと言い、調べたら「くくり入試」なので狙ったところに行けるかわからないので、変更。

校区内の公立に狙いを定めるも、最終的には僕は公立、トモは私立女子高を選択した。学校を決める中で、まだ中学生の二人は、真剣に将来のことを話した。


いやだって、地元の有名なお寺の長女さんだから、普通に考えたら婿養子とって、跡を継ぐって話がでているわけで。

単純な僕は、真剣に「だったら俺が坊さんになればいーじゃん!」と、真剣に考えていた時期があった。そんな僕を見て、トモの方が冷静に「やめとき。そんな簡単じゃないよ」と止めたくらいだ。


受験が近づくにつれ、塾での勉強時間も長くなり、だんだんと一緒にいる時間が短くなっていったけど、2学期はまだ僕の親友と、その彼女と4人で一緒にいることが多く、お正月にはトモのお寺まで1時間以上歩いて上り、4人で一緒に過ごした。


けど、そこからは受験のシーズンが本格的に始まり、だんだんと二人の間に距離が生まれていき、なにかたわいもないことで言い争いになることも増えてしまった。

一度はやり場のないイライラに身を任せて、鉄製の非常扉を思いきり殴ってしまい、その数日後に私立の本命受験に突入、ということもあった。

さすがに見かねた担任の先生が、職員室の隣の部屋に僕を呼び、「お前、トモと何があったんか?・・・・・先生もお前くらいの時は色々あった。だけど、今はちょっと受験に集中して、それからよく話し合ったらどうだ?」と諭された。


そんなことがありながら、迎えた3月。

スピーカーから「安全地帯」の曲が流れている。僕はプールに立ち寄り、目立たないところに、トモと僕の名前を書いた。



二人とも高校に入学した後はなかなか会えず、トモは

「次に会えるのはGWくらいかなー」という内容の手紙を書いてきた。

実際、GWには会うことができたけど、その後は、それきり。

連絡も取れなくなり、僕たちの関係はほどなく「消滅」した。


・・・いや?1回、けっこーヒドイ内容の手紙を受け取ったような・・・

よく覚えてないや。


僕はその後、別の子と「忘れられるかも」という理由で付き合ってはみたけれど、

そんなことにはならず、すぐ別れるという最低なことをしてしまった。



トモはその後も、時々手紙を送ってきた。

好奇心旺盛なところがあるので、

アメリカにわたり、なんとパイロットのライセンスもとったらしい。

帰ってきたときには、「向こうのおススメの歌」を詰め込んだテープをもらった。

しばらくヘビロテで聞いていたおかげで、その時の曲を聞くと懐かしさのあまり、80’Sの曲が集められたCDを買い集めることがあった。

・・・ただ、僕自身は英語がサッパリなので、未だに曲のタイトルがわからないでいるけど。


ほんとに、毎回ある日突然、トモは連絡をしてくる。


「元気~?」って。


その次には、


「結婚した」


「今キミが住んでる県にいるよ」


「こどもが生まれた」


「離婚しちゃった」


「再婚したー」


「入院してる」

          ・・・etc。


ホントにまるで猫みたいだ。


ふらっと現れて、いつもふらっと消える。

でも、いつも「ハイハイ」と言って、受け入れる僕も確かにいる。


それは多分、トモが恋愛感情を超えた「特別な人」だという証拠なのだろう。














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