後日談 戦術兵器開発記録


「待ちかねたぞ、この日を。我が王国の叡知が披露される、この時を」


 魔王を討伐してから、国民も落ち着きを見せてきたころ。


 オレ達勇者パーティは、『謁見の間』に小さな筒を持ち込んでいた。


「我が国の誇る偉大な魔術師たちよ、いざ成果を報告せよ」

「あい」


 謁見の間には、王様を含めた国家の重鎮たちがずらりと並んでいる。


 皆、今日のオレ達の『成果』を見るためにわざわざ集まってきたらしい。


「ご依頼のモノは、こちらの筒でございます」

「……おお、あれが」


 平和になった後も、オレ達の仕事は沢山残っていた。


 地方に残った残党の討伐や、後輩の育成。


 そして、


「勇者の開発した、新しい戦術兵器……」


 オレ達の死後も平和を守るための『兵器』開発である。





「これは、対魔族を想定して開発した決戦兵器です」

「決戦兵器……っ」


 オレ達を代表してユリィが立ち上がり、王様の前に出て兵器の説明を行った。


 彼女が手に持った、小さな花束ほどの筒の説明を。


「この兵器はたった1本で戦局をひっくり返しうる、人類の切り札となるでしょう」

「おお」


 平和の維持には、軍事力が重要。


 綺麗ごとだけで、世界は平和にならない。


 そんな国王の考えのもと、オレ達は国家から多額の融資を受けて『戦争兵器』の開発を打診された。


 そしてオレとユリィ、レイの三人が依頼を受け、一年かけてこの兵器を作り上げたのだった。


 こういう研究をするのは、基本的に魔術師組なのである。


「それは素晴らしいな。どれほどの威力なのだ?」

「これさえあれば、そこら辺の子供でも上級魔族を打倒できるでしょう」

「完璧じゃないか」


 オレは戦争に使う兵器の開発、というものには抵抗があった。


 だが、魔族との戦いで大きな犠牲者が出たのも事実。


 バルトリフのおっさんが、いつまで魔族を統率できるかもわからない。


 もしまた魔族が攻めてきた時に、保険を残しておくべきだという考えには賛同できた。


「対人間への性能はどうだ」

「この兵器は、対人間を想定していません。人に対しては起動しないように制限をかけています」

「何?」


 しかし、後世の権力者に私欲で利用されないとも限らない。


 オレ達勇者の力を、人同士の戦争に用いられるようなことはあってはいけない。


 あくまで外敵から人類を守る時にだけ使用して貰うために、制限を設ける事にした。


「なら、他国家に攻められた時はどうする」

「それは、我々の関知するところではありません」


 このオレの考えに、ユリィとレイも賛同してくれた。


 レイは『王様に嫌がらせしたいから』だそうだが。


「……まぁいい。その制限の是非について、後で検討させてもらう」

「申し訳ありませんが、ここを譲る気はありません」


 そのユリィの物言いに王様はムッとした顔をした。


 しかし、オレ達の後ろに控えているアルトに目をやって、押し黙った。


「……まあいい、少なくとも魔族との決戦に役立つならな」

「それは、保証いたします」


 アイツは、国家最強の男だ。何なら1人で国軍を全滅させられる存在。


 国王も、アルトを怒らせたくはないはず。


 だから三人じゃなく、パーティー全員で謁見の間に参上したのだ。


 

「して、その筒でどう魔族を打倒するのだ?」

「この中には、強化魔装具が収納されています。この魔装具を纏った人間は、勇者に匹敵する力を得られる仕組みです」

「本当に、そんな事が可能なのか」


 開発中、これが想像以上に凶悪な性能になると気づいていた。


 誰でも勇者級の強さになれる兵器なんて出回れば、世界のパワーバランスが崩れてしまう。


「可能です。だから、この力は強すぎて危険です」

「む」

「この魔装具の力を求めた人間同士が、争いを起こす可能性もあります。だから制限は必須でしょう」


 ユリィの真剣な物言いに、官僚たちは息を呑んで押し黙った。


 きっと無意識のうちに、「あの兵器を手に入れられたら」という欲にかられたのだろう。


「素人でも操作可能で、いつでも強力な力を使える。こんなものが出回ったら大混乱になります」

「まぁ確かに。であれば、製法は王家のみの秘匿とせよ」


 王様も、この兵器の性能を聞いてまずいと思ったらしい。


 想像以上にやべーもん作ってきたな、と恐れたようだ。


「この兵器の製法は秘匿しても、無意味かと」

「どういうことだ?」

「これは、製作者の能力を借り受けられる兵器です。私達が制作したからこそ、凶悪なのです。他の人が作ったところで、大した性能にはならないでしょう」

「ふむ。であれば、量産される恐れはないか」


 そう。


 この強化魔装具を纏った人間は、一時的にオレ、ユリィ、レイの3勇者の魔法全てが使えるようになるのだ。


 つまり身体能力が向上し、どんな傷を負っても自動で癒え、魔力を使わずレイの攻撃魔法を撃ち放題になる。


 恐らくアルトですら、この魔装具の装着者には苦戦するはずである。


「実に素晴らしい性能だ」

「この魔装具を使えば、誰でも勇者になれるという事か」

「そんな魔力はどこから持ってくるんだ?」


 この兵器の恐ろしさを聞いて、権力者たちは色めき立っていた。


 何とかこの魔装具を手中に収められないかと、皆が欲望を目に浮かべている。


 強すぎる力は、悪意を生む。


 こんなものが軍事転用されれば、どう悪用されるか分からない。


「ではそろそろ、お披露目と行きましょう。フィオさん、お願いします」

「ああ」


 ユリィの合図に応じ、オレは立ち上がって筒を受け取った。


 ……この『王の間』で、魔装具を装着するのはオレの手筈になっていたからだ。


「いつまでも焦らされるのは苦痛でしょう、王よ。許可を頂けるのであれば、今ここでこのフィオが魔装具を身に纏い、皆様にその全貌をご覧入れます」

「む、む。よし、よかろう。装着する許可を出す」

「御意」


 王様は、あっさり変身許可を出した。


 そしてオレは期待に応え、ニヤリと笑って筒についた魔石に手を触れた。




「夢見る乙女の、魔導循環サーキュレーション!」

「!?」


 次の瞬間、虹色の光が筒から放たれて。


 同時にオレの白魔導服が弾け飛んで、発光しながら全裸になった。


「重なる想いが光となって、邪悪を打ち砕く力となる!」

「え、ちょ……」


 両手を突き出すと、その先に真っ白な手袋がポンと音を立てて出現し。


 思いっきり体を逸らすと、オレの体躯にリボンが巻き付いてレオタードになった。


「光指す道となれ! ラブリー・エッセンシャル!」


 最後に、バレリーナばりにくるくる回りながらオレは宙へと浮かび……。


「魔法少女、プリティ☆フィオ!!」


 シャーンという効果音と共に、オレはフリフリのレオタードドレスを纏い、ふわっと舞い降りた。


「どうですか王様! フィオさん可愛くないですかこれ!?」

「何なんコレ」


 これが、オレ達魔導士組が1年以上かけて開発した『汎用人族決戦兵器』。


 その名も『魔法少女なりきり変身セットVer1.13』である。


「フィオ、今、お前一瞬全裸になったぞ!?」

「魔法少女ってのはそういうものだ」

「だ、駄目だ、そういうのは!」


 オレの変身シーンを見たアルトが、慌てて詰め寄ってきた。


 だが安心してほしい、流石にオレにも慎みくらいある。


「大丈夫だアルト。ちゃんと対策しているさ」

「た、対策?」

「変身中は、『聖なる光』の魔法が自動発動して、大事なところは見えない仕様になっています」

「何で罰当たりな聖なる光の使い方……っ!」


 そう。女神の力で闇を照らす『聖なる光』は、今まで光量が強すぎて使いにくかったのだが。


 それを逆手にとって局部を光らすと、程よいモザイクになるのである。


 オレのえっちな部分を見た奴は恐らくいない筈だ。


「ただ現状、弾け飛んだ衣類の修復機能まで搭載できておりません」

「変身が解けたら、全裸で屋外に放り出されるんだよな」

「変身兵器という仕様上、この被害は避けられませんでした」


 オレは説明のため、予備の白魔道服を被った後に変身をといた。


 すると、魔法少女服は光に溶け消えたが、元の服はバラバラのままだった。


「じゃあ変身要素いらなくね? 自分で身に付ける装備型でよくね?」

「無論、対策は講じています」


 王様は無粋な事を言い出したが、ユリィはスルーして話を進めた。


 オレ達的には兵器開発ではなく『魔法少女って良いよね』という呟きから始まった、国家予算で遊ぼうというプロジェクトなのだ。


 目的と手段を取り違えてはいけない。


「対策とは?」

「変身が解けても数分は『聖なる光』が発動しっぱなしになるようにしました」


 オレがチラリと魔導服の裾を上げたら、眩い光が漏れだした。


 そう、下着がはじけ飛んだのでオレの服の下はすっぽんぽんだが、まだ秘部がめっちゃ光っているのである。


「何の解決にもなっとらんくね?」

「だが王よ、変身解けたらすっぽんぽんになってイヤーン、はお約束だ。このままで良いじゃないか」

「儂、こんなのの開発に国家予算注ぎ込まされたの?」


 こんなの、と王様は言うが性能はかなり高いんだけどなぁ。


 制限つけたのも、兵器として運用してほしくないだけだし。


「というか、あの口上は何だ? プリティ……なんて?」

「ああ、あのセリフは3人で考えました。結構いい感じでしょう?」

「やっぱり決め台詞は必要だろって」

「何が、何で必要なの?」

「魔装具を装着すると、意志に関係なく強制的にあの台詞をしゃべらされます。最後のプリティ〇〇、の部分だけ自分の愛称があてはめられます」

「え、あの台詞言うのは強制なの? 怖くなってきたんじゃけど」


 王様は、ようやくこの兵器の恐ろしさを実感したようだった。


 戦術兵器の凶悪性を理解してくれて何よりである。


「ああいうセリフが似合うような女の子でも、使えるような設計にしたんです」

「女の子を戦場に立たせる気なの? 流石に兵士が運用する想定で作ってくれない?」

「いえ、本兵器はたまたま女の子が襲われた時などに使用します」


 ユリィはそう言うと得意げな顔になって、白いモフモフな謎小動物を召喚した。


 この謎生物が、今回のキーとなる獣だ。


「この兵器は普段、このユリっち君(謎獣)が管理するんです!」

「え、そのモンスター何?」

「この兵器使用者の、相棒となる小動物です」

「ドウモ、ユリっち君デス」

「喋った!!」


 王様の前に出現した白いモフモフは、甲高い声で王様に挨拶した。


 ……驚きのあまり、官僚たちが一歩後ずさった。


「実はこれ、魔法で作った人造生物なんです」

「ユリィが製作しました」

「え、怖……。新たな生命を作り上げちゃったの……?」


 王様が驚いているが、このユリっち君は厳密には生命ではない。


 プログラムで決められたことしか喋らない、愛玩ロボットのようなものだ。


 魔法少女には淫獣枠が必要よね、というオレの意見によりユリィが作成してしまった。


「コレは何をするために作った生き物なの?」

「この獣は、誰かのピンチを感知する生物です」

「ピンチ?」

「例えば急に魔族が現れて、子どもが襲われる事件が発生した時。ユリっち君がその気配を探知して、自動で駆けつけてくれます」

「あ、ああ、成程。だから、子どもでも使える想定なのか」


 そう、これは戦場で計画的に用いられるものではなく、咄嗟の事態に対するセーフティとなる兵器なのだ。


 誰かが魔族に襲われていたら、それをサーチしてテレポートするようプログラムされている。


 そして魔法少女なりきりセットは、その被害者に戦うための力を与える魔装具なのである。


「でもいきなり服を弾け飛ばされ、変な服で戦わされるのはヤバくない? 死ぬよりはマシだろうが、やはり問題がある。やはり普通の兵器として」

「大丈夫です。変身する前にしっかり同意を取ります、コンプライアンスですので」

「コノ契約書ヲ書イテ、魔法少女ニナッテヨ!」

「うわぁ胡散臭い!」


 ちなみにユリっち君の台詞は、全てユリィが吹き込んだものである。


 彼女は夜遅くまで楽しそうに収録し、音声加工して遊んでいた。


 オレもやりたかった。


「大体のコンセプトは分かった。分かったが……。これは兵器としてどうなんだ」

「間違いなく、誰かの役には立つでしょう。一時的とはいえ、勇者3人分の力を借りれるんですよ」

「起動時には、オレの回復魔法が自動発動するので瀕死の重傷でも大丈夫」

「死ぬ間際の人のために、『力が欲しいか……?』とシリアスな感じで問う音声も収録してます」

『力が……欲しいか?』

「さっきから要らん機能が多すぎる」


 王様はこの『魔法少女なりきりセット』の素晴らしさを理解できないらしい。


 オレ的にはかなり忠実に、魔法少女になる妄想を再現してみたのだが。


「お前ら頼むから、もう少し機能を省いて普通の戦術兵器を……」

「でも、もうあんま手を加えるところが無いような。大分魔法少女だよコレ」

「いえ、私は変身中のポーズがまだ単調かなって思います。手を伸ばすだけじゃなく、もっと踊り散らかしましょうよ」

「確かに駄シスターの言う通りだ。でも音もないのに踊り散らかすのは、微妙じゃないか」

「やるなら、BGMが欲しいな。BGMに合わせて踊りを振りつけよう」

「そうですね。では王様、王都楽団に協力を仰ぎ、良い感じの楽曲を提供頂けませんか?」

「やりたい放題か貴様ら」


 ユリィの改善案に、オレとレイがそれだと首肯した。


 よく考えたら、変身中にBGMは必須だ。どうして今まで思いつかなかったのだろう。


「BGM! BGM!」

「うるさいわ! そんなものよりもっと使いやすくしろ!」

「気付いてしまった以上、もう変身BGMが無いとやる気が出ない」


 どうせならBGMも、クオリティに拘りたい。


 国王を使って、楽団から曲を提供して貰うべきだろう。


「BGM? があったら何するんじゃ」

「台詞をミュージカル風にして、強制的に歌い散らかさせます」

「魔族に襲われたら服が弾け飛んで、踊り歌い散らかさせられるの? その娘の人生なんだと思ってるの?」


 まぁ、その辺の羞恥感情も含めて抑止力である。


 使用者がこの魔装具の性能に溺れないよう、出来れば装着したくないという印象を持ってほしい。


「まぁ王様が何を言おうと、このコンセプトを変えるつもりはありません」

「むむ……。頑固な奴等だ」


 王様は苦々しげな顔で、筒を抱いたまま浮いているユリっち君を睨みつけた。


 そのまま暫く見つめると、彼はふと驚いた顔になり、


「む、この魔石。見覚えがある気がするが、まさか国宝の────」

「あっ、王様! だめです、触られると」


 王様は、オレ達が素材として国宝をちょろまかしたことに気づいたらしく。


 確かめようと思わず、手に取ってしまった。


「夢見る乙女のォ、魔導循環サーキュレーション!」

「陛下!」

「重なる想いが光となって、邪悪を打ち砕く力となるゥ!」

「陛下!?」

「光指す道となれ! ラブリー・エッセンシャルァ!」


 次の瞬間。


 王様の服が弾け飛び、全身がカラフルな光に包まれて。


「魔法少女、プリティ陛下ぁ!!」


 シャーン、シャーンという効果音と共に、ペディア王ペトフィ・ルーモス三世はフルフリのレオタードを纏って、謁見の間に舞い降りた。


「ぬおおおおおお! 腰がぁぁぁあ!!!」

「しまった、後期高齢者が変身する想定をしていなかった」

「ぎっくり腰の人を、強制的に舞い散らかさせるのはまずいな」


 変身中はピンと腰を伸ばすポーズをするため、王様の腰がゴッキリ逝ってしまったらしい。


 王様が腰を押さえて悶絶し始めたので、仕方なく駆けつけて治してやった。


「そうか、変身シーンで負傷する可能性もあるのだな。気付かなかった」

「貴重なフィードバックをいただき、ありがとうございます。よりよい商品開発に取り組ませていただきます」

「お前ら、もっと儂に言うことない?」


 魔法少女姿の国王は不満げな態度で、腰を押さえて倒れ込んだままだ。


 ……まぁ、流石にこちらに非がありそうなので謝ろう。


「スミマセン、本来はピンチじゃないと起動しないんですけど」

「今日はデモンストレーションなので、魔石に触るだけで起動するデバッグモードで持ってきてまして」

「じゃあデバッグモードで納品してくれんか? その方が百倍使いやすいから」

「だめ」


 なおデバッグモードは、この後のアップデートで完全に削除するつもりだ。


 魔石に触れただけで変身出来たら、魔装具の力を悪用し放題だからである。


「あと、さっきからずっと儂の股間が光り散らかしてるんだが」

「レオタードからはみ出てますね、王様の王様が。ご威光が漏れています」

「お前、敬語使ってると見せかけて一番煽ってない?」


 ユリィは光り輝く王様の王様を見て、フっと笑った。


 豆粒バーディサイズなので、可愛かったのだろう。


「サイズが小さい! 布面積が少なすぎてこぼれる!」

「まぁ、本来女性が着る想定でデザインしたし」

「変身を解除したければ、心の中で『トレース・オフ』と念じればいいですよ」

「何その呪文」


 まもなく国王陛下の変身は解かれ、全裸で局部を光らせた成人男性が謁見の間に放たれた。


 見るに耐えない絵面だが、自分達が作った兵器のせいなので何も言えない。


「女性向けのデザインしかないのか。男が着用してもデザインは変わらんのか」

「ああ、そこは魔法少女なりきりセットなので」

「当初は少女しか変身できない予定だったんだが、そこの駄シスターがゴチャゴチャと……」

「性別特異的な道具は、差別を助長させます。コンプライアンスとして、魔法少女になりたいという成人男性の想いは尊重されるべきなんです」

「変なところで先進的だな」


 この魔法少女なりきりセットを、成人男性にも使えるよう調整したのはユリィだ。


 ここは、彼女なりのポリシーに関わるとこらしい。


「それに無理やり女装させられる成人男性は、私的になんかいい感じです」

「でも、さっきのマジカル☆国王は絵面酷くなかったか」

「それはまぁ」

「お前ら、もう処していい? 不敬罪を甘く見すぎてない?」

「残酷ですが、女装はイケメンに限ると言いますか。アルト様とか、結構似合うかも」

「もうコイツ聖職者辞めさせろよ」


 ユリィはちらっとアルトの方を見て、不気味な笑みを浮かべた。


 珍しく、アルトは怯えた表情をした。


「とりあえず改善点は見つかったので、次回の評定までにアップデートしておきます」

「王様もBGMの用意、よろしくな」

「それマジで言ってる?」


 国王に研究成果の発表とか面倒くさいだけだと思っていたが、おもったより有意義な時間だった。


 色々な意見が出て、今後のアップデート方針も立った。


 やはり、他人に成果を見てもらう場と言うのは重要だ。


「完成したら、ユリっち君は勝手に野に放っておきますね」

「おい馬鹿、ちゃんと政府に管理させい。国費を投じた兵器じゃぞ」

「ユリっち君は、スペアを量産しておこう」

「獣と間違われて狩られる可能性あるしな」


 こうしてオレ達は大満足で、謁見の間を後にした。


 数日後、国王から「予算否認」みたいな紙切れが届いたので、


『オレ達は戦争の道具を作りたかったんじゃない。誰かを守る力を作りたかったんだ!』


 という格好良い台詞で、魔法少女姿に変身して王様に怒鳴りにいった。


 ツボに入ったのか、バーディは爆笑してた。



 その後、調整してからユリっち君は野に放った。


 ルートの予知によるとオレ達の死後、この兵器で大勢の命が救われることになるという。


 どうやら可愛い魔法少女が、大活躍するらしい。


 その勇姿が見られないのは、残念である。


「じゃあな、ユリっち君」


 小動物は振り向くことなく、森の奥へと消え去った。


 いい仕事が出来たと、オレ達は淫獣の門出を笑顔で見送った。


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TS転生してまさかのサブヒロインに。 まさきたま(サンキューカッス) @thank_you_kas

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