君は角川つばさ文庫小説賞を知っているか?
秋田健次郎
角川つばさ文庫小説賞について考えよう!
みなさんは角川つばさ文庫小説賞をご存じだろうか?
名前の通り角川つばさ文庫が主催している公募で、カクヨムからも応募することが出来ます。
ジャンルで言うといわゆる「児童文庫」にあたる。
「いやでも、俺には児童文庫なんて関係ねえよ」とお思いかもしれません。
しかし! 児童文庫を舐めてはいけない。
子供にも伝わるよう、無駄をそぎ落していく作業は刀の切れ味を研いでいくよう。出来上がった作品はあなたの持つエンタメ観をそのまま表す一作になることでしょう。
ということで、わたしは児童文庫を一作書いてみることをお勧めしております。
出版されてる作品もぜひ一度読んでみて欲しいです。子供向けでありながら決して幼稚ではない著者たちの筆力を感じることが出来るはずです。
わたしもまだあまり読めてはないのですが、「あおいのヒミツ!」という作品が一番好きでした。
さて、話は変わりまして。前述した通り角川つばさ文庫小説賞へはカクヨムからも応募が可能です。すなわち、過去の応募作を読めるのです。
大賞を受賞された作品は非公開になったり、序盤だけの公開になったりすることが多いですが、それでも最終選考に残った作品は受賞作品と遜色ないはず!
ということで、2024年4月時点でカクヨムで読める角川つばさ文庫小説賞の最終選考作品を全て読んできました。
もしかすると漏れがあるかもしれません。その時は本当に申し訳ないです。教えていただけると読みに行きます。
田原答さん「オバケがシツジの夏休み」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054883930252
第六回角川つばさ文庫小説賞の金賞受賞作品です。
大半の受賞作は非公開にされる中で、本作は全編公開という大盤振る舞い。文庫版を購入することで、カクヨム版との違いを分析するのも面白いかもしれないです。
児童文庫で求められるキャラクター性を存分に味わうことのできる楽しい作品です。オカルト要素はやはりいつの時代も子供たちに大人気なんでしょうね。
無月弟(無月蒼)さん「アオハルチャレンジ!」
https://kakuyomu.jp/works/16817330660037719878
第十二回角川つばさ文庫小説賞の金賞受賞作品。
2024年4月時点で最新の受賞作品で、現時点ではまだ出版されていません。なので、今後非公開になる可能性が高いです。
児童文庫でオカルトと双璧をなす人気ジャンルである恋愛。そんな胸キュンど真ん中の恋愛をやりつつSNSの良さと怖さも教えてくれる、現代的なテーマの一作です。
弓葉あずささん「おそうじクラブはゴーストバスター?」
https://kakuyomu.jp/works/16817330649941513760
書かせていただいたレビューhttps://kakuyomu.jp/works/16817330649941513760/reviews/16818093074566150486
第七回角川つばさ文庫小説賞の最終選考作品。
本作はタイトルの通りオカルト要素がベースの作品で、すごく王道な展開が心地よかった。キャラクターの書き分けが抜群で、少年漫画っぽい雰囲気も感じる一作です。
七海 まちさん「ヤシロさんは成仏できない」
https://kakuyomu.jp/works/16817330649958340024
書かせていただいたレビューhttps://kakuyomu.jp/works/16817330649958340024/reviews/16818093075045068139
第八回角川つばさ文庫小説賞の最終選考作品。
ちなみに、七海まちさんは最終選考に2作品を進めており、もう片方の「デスコレ!—運命は、変えられる—」は金賞を受賞されています。すご。
選評で「少し年上向き」と評価されていたこともあってか、個人的には本作が一番刺さった。オカルト要素と恋愛要素の両方がすごく質が高くて、それでいて生き方について考えさせてくれるテーマ性もすごく良かった。
富升針清さん「私が小説を書く時は」
https://kakuyomu.jp/works/16816700426798808069
書かせていただいたレビュー
https://kakuyomu.jp/works/16816700426798808069/reviews/16818093074361392655
第十回角川つばさ文庫小説賞の最終選考作品。
純粋に胸キュンできる青春小説に小説執筆という要素を上手く組み合わせられた作品。
胸キュン恋愛ものという王道にどんな要素をプラスアルファできるかがポイントなのかもしれないですね。
雪桜さん「今日からママになりまして!」
https://kakuyomu.jp/works/16816700429013766232
書かせていただいたレビュー
https://kakuyomu.jp/works/16816700429013766232/reviews/16818093074420163308
第十一回角川つばさ文庫小説賞の最終選考作品。
突如現れた子供たちを育てることになるという設定が非常にユニーク。
胸キュン恋愛要素もしっかり押さえられてて、それに加えてSF要素が出てきたり、作者のメッセージが込められていたりと他作品との差別化を意識されている印象でした。
総評:
まず、分かるのが「オカルト」と「恋愛」の2つは児童文庫における王道ど真ん中ということですね。
今回取り上げさせていただいた6作は全ていずれかの要素をおさえています。
角川つばさ文庫小説賞に応募するにはこの2つのどちらかが必要そうですね。
とはいえ、必須という訳でもなくて前回大賞を受賞された「あおいのヒミツ!」は多少恋愛要素はあるものの、主軸には置いてませんでした。
また、選評においても「従来の傾向を超越してくれるようなスケールの大きい作品が欲しい」的な記述がここ数年見られるので、選考委員的にはもっと意欲作が欲しいということなのかも。
このあたりのバランスは中々難しいですね。王道から少し外しつつもしっかり児童文庫の良さも維持しないとダメなので。
それともう一つ大きい要素としては「主人公が女の子」という点ですね。「オバケがシツジの夏休み」以外は全て女の子が主人公です。
これは角川つばさ文庫の主な読者が女子小学生だからだと思われます。女の子の主人公とイケメンのクラスメイトという組み合わせも王道なので、そういう意味では児童文庫は少女漫画的な側面のあるジャンルとも言えそうです。
とまあ、偉そうに考察はしてみましたが新作一覧を眺めているとこれらの傾向とは特に関係のない作品も多くあります。
なので、上で述べた特徴は頭の片隅に入れつつ、本質は読者目線と言うことなんだと思います。小4から小6くらいの女子小学生がその作品を読んだときにどう感じるだろうか?という視点。
角川つばさ文庫小説賞への応募作品は小説執筆に最も重要な読者目線を鍛えられるので、自分本位になってしまいがちな執筆行為に客観性をもたらしてくれる良い機会だと思います。
角川つばさ文庫小説賞への応募は
・文字数制限が7万文字なので、テンポよく物語を結末まで持っていくスキルが養われる。
・読者が小学生なので独りよがりな表現や描写を自然と抑制できる。
・他の公募よりも対象が明確な分、傾向と対策を練りやすい。
・ラノベを書くのが苦手で、かといって一般文芸の公募もなぁ……という場合にちょうどいい。
などなど、様々なメリットがあります。個人的には結構狙い目だと思いますよ。
というわけで、君も角川つばさ文庫小説賞に応募しないかい?という話でした~。
角川つばさ文庫小説賞にて選考委員を務めてこられた宗田理先生に哀悼の意を表します。
最終選考に進めば宗田先生に読んでもらえるかもとワクワクしていた中の訃報で大変残念でなりません。
君は角川つばさ文庫小説賞を知っているか? 秋田健次郎 @akitakenzirou
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