遊郭の瓦礫を見つめ、消えゆく隠微な香りと共に、少年は大人になっていく。

この作品は短い文章ながらも、過去を偲ぶように目頭が熱くなるものです。

過去と現在が交錯する中で、主人公の少年時代の記憶と成長を描いています。特に、かつて賑わいを示していた遊郭の雰囲気や香りが、歳月とともに幻となり消えゆく様子が印象的です。主人公自らが赤いあかりが灯った建物の解体に立ち会うことで、過去の記憶が鮮明に蘇り、同時にその消失を目の当たりにするという体験が、深い感動を与えます。

昭和の郷愁を誘う余韻を残してくれた掌編をありがとうございました。