第12話 学園生活は始まったばかり
後日、俺とダリー、シンディの三人でエルパルスの街へ遊びに来た。今週は課外授業やシンディとの決闘など色々あった。充実した一週間といえる。
俺たちは丁度街の解体屋にヴィタートルを受け取ってもらったところだ。結構な値段で買い取ってもらえて、取り分を三人で山分けした後でも結構な額だ。
俺の横を歩くダリーが言う。
「ディン君。ほくほく顔だね」
「そうか?」
「そうだよ。すっごく嬉しそう」
「まあ、金が入るのは嫌じゃないよな」
ダリーを見ると彼女のケモミミと尻尾がピコピコと動いていた。もしかしたら、今は俺も同じ感じなのかもしれない。なんて考えていると、ダリーの反対側を歩くシンディが楽しそうに笑った。
「ふふっ二人とも喜んでくれているようでよかったですの」
「ああ、シンディも楽しそうに見える」
「そこは当然。友達が楽しいのは私の楽しいでもありましてよ」
「そうだな」
もうシンディとも友達だ。その影響か、決闘での俺の活躍を見てなのか、最近は上級生から色々なクラブ活動に勧誘されている。どうしようか。今も悩んでいる。
「……ダリーとシンディはクラブ活動はもう決めたのか?」
「そうだねえ。そろそろ決めないとねえ。どこかに入りたいと思ってはいるんだけどねえ」
「だったら、決闘クラブなんてどうです? クラブの皆で決闘の技能を高め合いますのよ」
「へえー。そういうクラブもあるんだ」
「いえ、わたくしが考えました」
「これから作るってこと!?」
オーバーリアクションで驚くダリーと得意気に胸を張るシンディ。そんな二人を見て俺は楽しい気持ちでいっぱいだった。
「あ、ディン君が笑ってる」
「さっきのとは、また別の笑顔ですわね」
「いや、友達と一緒に過ごすのが楽しいんだ。本当に」
「それはどういたしまして」
「わたくし、あなたたちにもっと楽しい毎日を提供してあげましてよ」
俺は「ああ」と相槌を打ち、彼女たちに素直な思いを言う。
「魔法学園にやって来て良かったよ。良い友達ができた」
「それは私も」
「わたくしも、ですわ」
「これからまだまだ学園生活が続くんだと思うと、わくわくする」
「そうだね。ディン君。君が気付いてるかは分からないけど、Dクラスの他の子たちも、君の活躍を見て勇気を貰っているようだよ。皆、自分にできることは何か考えてる。私も、うかうかしてはいられないよ!」
ダリーは胸の前で二つの拳をぎゅっと握った。彼女の言う通り最近のDクラスには活気のようなものが出てこようとしている。彼女も頑張る気になっているようだし、良いことだ。
「さ、ディン君。今日は何をしよっか!」
「わたくし、どこまでだってついていきますわよ!」
ダリーとシンディと、どこへ行こうか。何をしようか。選択肢はいくらでもある。
俺たちの学園生活は始まったばかりだ!
魔法学園の落ちこぼれ生徒は防御魔法だけで成り上がる~使える魔法の数が全てを決めるわけではないと俺は『バリア』で証明しよう~ あげあげぱん @ageage2023
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