望みを失った救国の聖女はどこへ向かう?

類稀なる治癒魔法を使うへカティア。
それにより戦場で多くの人の命を救い、救国の聖女と呼ばれた彼女ですが、誰もが崇めるような英雄として優雅な暮らしを、なんてことにはなりませんでした。

それどころか、少し前まで彼女がいたのは地下牢。
とても聖女とは思えないほど悲惨な扱いを受けていた彼女ですが、そこに現れた妖精ランパスの助けのおかげで、なんとか脱出となりました。

しかし、いったいなぜそんなことになってしまったのか。
実は戦場で多くの人々を救ったへカティアですが、それでも戦いは続きます。兵士は再び戦場に行き命を落とす。そんな彼らを差別し、死地になるとわかっていて送り込むものがいる。
へカティアは傷は治せても、こんな世界の歪みみたいなものは、さすがにどうすることもできませんでした。

そんな世の中の負の部分を目の当たりにしたへカティアの葛藤と苦しみこそが、本作の見どころ。
本作で書かれる世界は決して美しいものではなく、むしろ痛みや苦しさに溢れていて、へカティアも当然傷つきます。
苦しい場面が出る度に不安になり、だからこそ何かしらの形で救いがあってほしいと願わずにはいられません。

心がすっかり折れてしまっても不思議じゃない。
そんな思いをした彼女は、最後いったい何を望み、どこに向かって歩みを進めていくことになるのでしょう?

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