不死身の聖女、ダンジョンに行く。~高飛車妖精と寡黙な用心棒を連れて~

肥前ロンズ

第1話

 ――アーモンドの花と溶け合ったような銀髪。

 かつて、そう例えられたある女がいた。

 類を見ないその髪の色は、女に懸賞金が掛けられた今、その特徴として挙げられている。




「もう、だから隠しておきなさいって言ったでしょ、へカティア」


 

 ふっくらした頬をさらに膨らませて、女――へカティアの肩に座る妖精は言った。


「その髪の色、目立つんだから、フードぐらい被っておきなさいって」

「だって、こもってよく聞こえないし……森の中で、音がわからない方が怖いじゃない」


 男たちに囲まれているというのに、二人はのんきに話す。


「それにランパスの魔法なら、これぐらいなんてことないでしょ?」

「無理。お腹空いて力出ない」

「ええー……」


 妖精――ランパスの言葉に、へカティアは頭を抱える。それを怯えの表情ととった男たちが卑しい笑みを浮かべた。その時だった。


 開けた森に差し込む、眩しい夕日。

 その逆光を浴びた影が、目にもとまらぬ速さで動く。

 シュン、と風を切る音が聴こえた気がしたと同時に、男たちは倒れていた。


「……え?」


 残ったのは、間抜けにも口を開いてたたずむへカティアと、ランパスのみ。

 カアカアというカラスの声と共に、風を切る翼の音が響いた。

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