月桂樹

@sumikawasakune

プロローグ

刑事の轟竣介とどろきしゅんすけは後輩で相棒の麻場莉乃あさばりのと休暇で某県の海沿いにある旅館「蘇芳館すおうかん」に来ていた。ここは出来たばかりだが有名ブログに掲載されたことで、活気にあふれていた


「おい、ここほんとに創業一年も無いのかよ見た目50年はあるぞ」


「私の言う事が信用できないんですか?それに竣さんもブログ見たでしょ?」


「ブログは見たがよお」


「それより早くチェックインしません?楽しみで楽しみで!私あのブロガー大好きなんですよ」


「それもそうだな」


そういい帳場に向かうと若女将がせわしなく業務をこなしていた。


「あの」


轟が声をかけると若女将は顔を上げ短く「っひ!」っという声を上げた。


それもそのはず轟の風貌は白髪交じりのオールバックに右目にかかるように切り傷がありスーツをきっちりと着用していた。


刑事といわなければ通報されかね無い威圧感があった。だがさすがはプロというべきかすぐに予約を確認し、二部屋分の鍵を渡してきた。


轟がカギを受け取ると後ろから聞き覚えのある笑い声が聞こえてきた。「あはは、竣さん女将さんの事怖がらせちゃってるじゃないですか」


「刑事のくせに名前に麻の字が入ってる奴には言われたかねーな。マトリ(麻薬取締官)にしょっ引かれちまうぞ」「竣さんひどーい竣さんこそマル暴(組織犯罪対策部4課。主に暴力団の絡んだ事件を担当)に捕まっちゃえ」「おまえ父親代わりのやつになんてこと言うんだよ」


この二人はいつもこのような会話をしている。だが仲が悪いわけでもなく何なら轟は麻場の義理の父なのである。麻場莉乃の父麻場蒼太は敏腕刑事として名を馳せていた。轟もそんな蒼太を慕っていたがあるとき事件を捜査しているときに、追い詰めた犯人の反撃にあって殉職した。


そして轟は蒼太の遺言に従って莉乃の父になったのだった。今から25年前轟は28歳莉乃は3歳の時の

出来事だった。


轟は自分の部屋である5階の階段から一番遠い部屋に入ると畳の匂いと座卓の上に置かれた花瓶に生けられたアルメリアに目が行った。荷物を置いて腰を下ろすと先程の若女将がお着き菓子をもってきて色々話をしてくれた。


花瓶のことを聞くと女将さん布団を敷くときにが生けているそうだった


「お前なぁもうちょっとおかみさんの話聞くとかあるだろ」


「だっておいしいんですもん要らないんだったら貰っちゃいますよ?」


「待て俺が食う」


「そういえば竣さん知ってます?お着き菓子って血糖」


「血糖値を上げるためだろ?そうだ明日牡蠣食いに行こうぜ」


「なんだ知ってるんだ。牡蠣いいですね」


その日は旅の疲れもあったため轟たちは部屋のふろに入り晩御飯を食べるとすぐに就寝した。


翌日二日目の朝は旅館のレストランで二人は朝食をとっていた


「おい莉乃これ食ったか?めっちゃうまいぞ!」


「食べましたよ?それに美味しいに決まってるじゃないですか~だってこの旅館は」


「ミシュランの三ツ星シェフが当日市場まで行って買ってるんだろ?何回目だよ」


「でもこの和洋折衷な感じがいいですよね~」


「この旅館そんな感じするよな外見はがっちり旅館なのに入ればホテルっぽい雰囲気もあって」


「それより今日はどこ行きます?楽しみで昨日寝れなかったんですよ~」


「まずは牡蠣だろ?それにそうだなーお好み焼きなんてどうだ?」


朝食を終わらせロビーでそんな他愛ない会話をしていると後ろから声をかけられた


「おはようございます、おでかけですか?」


「あぁ女将さんおはようございます、ええ少しここらを観光しようかと思いまして。どこかいいところありますかね?」


「観光ですとここから少し歩くと海につながっておりましてそこの釣り堀で釣りなどはいかがでしょう?」


「釣りか~、いいですね!竣さんいきましょ!」


「それじゃ釣りにすっか。ありがとうございます」


「いえいえ釣れた魚をお持ちいただければこちらの料理人が調理しますので是非その時は」

そのあと二人は釣竿を借りて海に向かった

「釣りかぁ釣りっつうと蒼汰さん思い出すなぁ」

「父さんを?」

「あぁよく釣りにつれて行ってもらったもんだぜ、まぁいつもあの人が坊主で俺が大量だったから拗ねてたけどな」

「今日はどうなるとおもいます~?」

「ばっちし俺の腕前見せてやるよ」

釣果は轟が坊主に終わったが傍から見たら中のよさそうな親子にも見えるこの日は二人の思い出に深く刻まれた


三日目は朝から少し遠出して近年各国の首相などが訪れたことでもにぎわった平和記念館を訪れて旅館に戻った


「いや~いつ来てもロビーはパンパンだな」


「みんないろんな話してますね」


「お前よく聞き分けれるな」


「あー私読唇術使えるんですよ。ほら唇読むほうの」


「いつの間にそんなの覚えてたんだお前!それでみんなどんな会話しんだ?」


「詳しくは見えませんけど浮気はサイテーとかご飯美味しいよねーとか楽しかったーとか帰りたくないとかですね」


「まぁ当たり前だけどまばらだな。そろそろ晩飯の時間か。んじゃ晩飯食いに行くぞー」


その日はその地方の郷土料理であるサメの刺身などを食べて終わった


次の日周辺をぶらぶらと散歩して宿に戻り部屋でゆっくりしていると事は起こった。


轟が荷造りの最終確認をしていると


蘇芳館には似合わない声が鳴り響いた。轟は刑事の勘というべきかすぐにそれが実際に人間の口から出ている悲鳴であることを察知して携帯していた警察手帳を握ると麻場とほぼ同時に部屋を出た。


「おい麻場!どっちから声した!」


「多分階段側です!」


「ここか!」


そこはすぐに分かったなぜなら二人が現場に着く時にはすでに軽く人だかりができていたからだ。二人が警察手帳を見せて人払いして部屋に入ると


20代後半くらいの女が男のものと思われる名前を叫びながら男に泣きついていた。轟が女性に警察手帳を見せた後、脈を確認して死亡が確認された。

「麻場は女将さんを呼んだあと通報しろ俺はこの人に事情を聞いとく」


麻場はすぐに帳場までむかいその間轟は女性に話しかけて関係性などを聞いていた


女性の名前は小鳥遊朱音たかなしあかねといい東京で大手企業に勤める32歳のOL、殺された男性は東雲宗太しののめそうたといい小鳥遊朱音とおんなじ企業に勤めるサラリーマンだった。


二人は付き合っているらしく今回は旅行できていたとのこと。そんなことを聞き出していると麻場の呼んだ地元警察が来てより詳しい情報を聞き出した後自分たちも、一応と事情聴取を受け、翌日チェックアウトしてホテルを去った

事件の起きた部屋の間取りは轟の部屋と同じだが花瓶には月桂樹の枝が添えられていた。

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