おまけ

 夜会服を仕立てるにあたり、夜には冷えるからと防寒用の肩掛けも作ったのにセレンに渡すのを忘れてしまった。これはいけないと、フィロは帰途についていたところを急いで聖堂へとって返していた。

 鍵の開いた玄関を入ると、ミネルヴァが廊下に佇んでいる。

「先生、どうなさったんです」

 すると老婦人は口に人差し指を当て、にっこり笑いながら玄関へとやって来る。その様子で状況を理解した。

「やだ先生。何なさってるんですか」

「違うのよ。ちょっと見えちゃっただけ」

「あたしだってしませんよ、覗き見なんて」

「神は全てをご覧になっていらっしゃいます」

 先生は神じゃないでしょう、と呆れながらも部屋の方へ首を伸ばすフィロに、ミネルヴァはうふふと笑ってくるりと背を向かす。

「さあさ、お茶の準備でもしましょう。お邪魔になってはいけないわ」

「なぁに先生、一人だけ」

「ほらほら早く。フィロも飲んでいってね」

 足音立てないで、と食堂へ追い立てる。木板の廊下が陽に温められる和やかな午後であった。


 ――おしまい。

 クルサートルは殺されていいと思います。


この後、メリーノの屋敷に行った短編はこちらです。男二人の愉快な?大喧嘩です。

https://kakuyomu.jp/works/16818093076869158820



本編、シリアス(恋愛)ファンタジー「月色の瞳の乙女」はこちら。

https://kakuyomu.jp/works/16817330667049844136

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

神の祝福(月色の瞳の乙女) 蜜柑桜 @Mican-Sakura

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ