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 時と場所は変わり。サンフランシスコ湾の沖合。

 そこは雲ひとつない青空に、さえぎるものなき大海原であった。




 単に艦隊を観閲するだけではない。壮大な船旅。首脳が一堂に会する桁外れの豪華クルーズであった。

 そのクライマックスはサンフランシスコの湾内航行。各国威信の健在ぶりを示す一大セレモニー、国際観艦式なのである。



 軍艦一隻には、その国の実力が映し出される。



 招待客は錚々たるメンバーであった。

 王立連邦ブリテンからは、王国首相アンソン・イーデン卿。

 共和国マリアンヌからは、財務総裁ヴァレール・ジスカールデスタン。

 

 

 名だたる亡命政府の首班達がそろい踏みである。

 観閲艦である「しなの」一艦へと集結しているのだ。仮にも戦前より極東の経済大国であった日本国が、いまなお現在たらしめている国際影響力というものか。

 そして並み居る要人を招待するに及んだ、日本国の大物指導者はというと……。


「学院州からお越しのみなさ〜ん! パーティーは楽しまれてますか〜?」


「あ、ホワイトにカードで負けた人やん」


 アイリスは開口一番、指差しでおちょくった。


「いや! あれは紙一重で惜しかったんですぅ! なんでトップレア当ててたんですかあれ〜!?



「ご友人なのか?」

「ん。あの大戦前にちょくちょく会っとったし、そのようなものかもしれん」



「じゃあわたしからも紹介するけん。この年齢詐欺みたいなおばさんは、ついこの間に35歳」



「ねえホワイト? 俺らってこんな出来損ないのコントで時間食ってるヒマあんの……?」

「アイリスに聞いてくれ」




「アイリスさん……、ですか?」



 可憐なドレスに身を包んだ、一人のいたいけな少女であった。


「……あっ、あの! 申し遅れました! わたくしは王立連邦ブリテン王女、セラフィナといいます!」

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自由の国のアイリス ―合聖国戦記― 【2】日本国喪失 ICHINOSE @tokyotype94

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