美しいだけでなく生なましいリアリティ

とても詩的で幻想的なストーリーながら、病人の心理描写が巧みでした。
病気に耐える人間を美しく描くのではなく、自分が体験できないことを考えると苦しむ様子がとても生なましかったです。
具体的には、主人公の担当医が結婚指輪をしているのに気づいてがっかりする描写は素晴らしいリアリズムでした。
病気の主人公が、本来恋愛対象にされない支援者(医師)まで男性として意識してしまうのは学校にいけない主人公にとっては通常の反応だと思いました。
いらだちから担当医を責めるシーンもその場にいるような臨場感があります。

後半は病院を抜け出し幻想的なストーリーへ変調します。それがこの作品の醍醐味です。
文字数も多くないので一気読みしてしまいました。おすすめです。

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