第6話 幽閉された意志

(※ このエピソードには暴力的な描写が含まれておりますので、苦手な方や不快に感じる方は、ご注意ください。)



 アルヴィンの言葉は氷のように冷たく、彼の目からは計り知れない意志が放たれていた。彼の存在が示す冷酷さと決意は、この戦場をさらに緊張感で満たし、周囲の空気を凍り付かせるほどだった。


 ミヤビは、その場で圧倒的な存在感を示すアルヴィンに向かって力強く宣言した。


「アルヴィン、君がどのような存在であれ、理人の心に侵入することは決して許さない。彼は私と共に戦うパートナーだ。」


 ミヤビの声は凛としており、彼女の言葉は断固たる決意を伴っていた。その言葉が空間を貫き、理人の心の奥深くに響き渡った。


 アルヴィンはその言葉に対して一瞬、表情を歪める。彼の顔が一瞬で蒼白に変わり、感情の波が顔に浮かんだ。しかし、彼はすぐにその動揺を抑え、不敵な笑いを浮かべながら声高に宣言した。


『フハハハハ、愚かな女よ、お前が理人の何を知っているというのだ? 彼の心の深さ、その暗い側面を本当に理解しているのか?』


 ミヤビはアルヴィンの挑発に一瞬心を乱したが、すぐに自らの内面の強さを取り戻し、静かながらも力強い声で応じた。


「私が知っているのは、理人が持つ無限の可能性と、彼が心の奥底に秘めている純粋な光だ。それを私は信じている。」


 この断言は、その場の空気を一変させるほどの力を持ち、アルヴィンをして一時的に言葉を失わせた。戦場の緊張が一段と高まり、周囲の空気が凍りつくような静寂が訪れた。ミヤビの存在が理人の内面に秘められた善良な力を呼び覚まし、アルヴィンの影響力を次第に薄れさせていったのだ。


 その一瞬の隙を見逃すまいと、ラビは先ほどアルヴィンによって切断された自身の片腕を遠隔操作して彼の首に向かって飛ばし、捕らえた。そのヴァンロード自律型AI兵士の腕が手が冷たくアルヴィンの首を締め上げ、彼を後ろの壁に押し付けてはりつけにする。腕の無慈悲むじひな圧力により、アルヴィンの呼吸は苦しくなり、このメカニカルな動作が、周囲の空気を一層冷え冷えとさせ、戦場の緊張感を極限まで引き上げた。


「先ほどの威勢はどうした?このまま首をへし折ってもいいんだぜ」

 と、ラビが冷たく挑発する。その声は鬼気迫るもので、周囲の戦場の騒音を切り裂くほどの鋭さを持って響き渡る。


 アルヴィンはその挑発に対して冷静を装いつつも、内心で状況の打開を図っていた。


『女、理人が死んでもいいのか?その杖シングルスタッフはただのか?』

 と、ミヤビの決意を試すように問いかけた。


 ラビは嘲笑を浮かべながら、さらに圧力を強めた。

「ちっ、何をごちゃごちゃ話してる、お前は目障りだから今ここで処刑してやる。」


 その危機的瞬間に、ミヤビが冷静かつ断固たる態度で前に踏み出し、「させない!」と宣言した。彼女の声は冷ややかでありながらも情熱的で、その場の空気を一変させた。彼女は片手杖シングルスタッフを天に向かって高く掲げ、その杖から放たれる強烈な光がラビのアイグラスに障害電波を送り続け、遠隔操作されていた片腕の動きを鈍らせた。


 衝撃を受けたラビは思わずアイグラスを外し、その瞬間ミヤビとラビは目が合う。ミヤビはあまりの突然のことで一瞬たじろぐも、すぐに次の行動に移し、片手杖シングルスタッフを迅速に地面に大きな円を描き、一筆が終わると同時に彼らを包む異空間が展開された。ミヤビとアルヴィンはその場から静かに消え去り、残されたのは戦場に響く不可思議な静寂と、未知なる可能性への扉が開かれたことを示す光の軌跡だけだった。


 ラビは、しばらくその場に呆然と立ち尽くすしかなかった。合流したタリムも、ただただその空間を凝視し続けることしかできなかった。ミヤビが作り出した異空間の門は、彼らが知る限りの現実を超えたものであり、その技術と魔法の融合は彼らに新たな脅威として認識されたのだった。

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視窓のリメイク 悠鬼よう子 @majo_neco_ren

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