第3話 時の勇者たち

 空気が凍りつく中、赤髪のヴァンロードが手榴弾を投げた。ミヤビはその危険を直感で察知し、青年の腕を引っ張って近くの雑居ビルの中に身を潜ませた。大きな爆発音と共に煙と炎が舞い上がり、路地は一時的な地獄絵図と化した。ヴァンロードたちは冷酷に彼らを追撃し、無慈悲にも次々と弾を発射してきた。


 ミヤビと青年の頭上から、手榴弾の衝撃により雑居ビルの天井から瓦礫が降り注いだ。しかし、ミヤビは瞬時に手持ちのアンブレラをドームへと変形させて、二人をすっぽりと覆い隠し、ピンチを脱した。


 幸いにも、雑居ビルの入り口付近が瓦礫の山と化し、ヴァンロードからの追跡を一時的に中断させることができた。時間稼ぎをしている間、ミヤビは青年を伴って階段で駆け上がった。その途中、ミヤビは深呼吸をし、瞬時に考えを巡らせた。彼女の目が階段の踊り場に設置されていたアンティーク調の古時計に留まった。

でいた。


 まるで時の流れを見守る沈黙の番人のように、静かにたたずむ古時計は、時計の針がゆっくりと動く音が、ミヤビの心の奥深くまで響き渡り、まるで過去と未来が交差する瞬間を捉えているかのようだった。彼女のヘテロクロミア虹彩異色症の瞳の色が変わると、先ほどの光景を再現するかのように異次元空間から幾多もの窓が再び現れた。そのうちの一つの煌めく窓から紋章エムブレムを慎重に取り出し、古時計の振り子に静かに埋め込んだ。その瞬間、振り子がまるで魔法にかけられたかのように淡い光を帯び始め、時計全体が神秘的な輝きに包まれた。


 突然、ミヤビたちのいる雑居ビルから轟音ごうおんが鳴り、地響きで建物全体が揺れる中、ミヤビと青年はそのまま屋上に上がった。走りながらお互いの自己紹介を始めた。


「自己紹介がまだだったね。私はミヤビ。君の名は?」とミヤビが尋ねた。


青年は一瞬戸惑ったが、すぐに答えた。

「理人。…君を守るためにここにいる。」


 ミヤビは微笑みながら言った。

「じゃあ理人、僕をヴァンロードの攻撃から庇ってくれたお礼に、君には特別にを魅せてあげるよ。」


 二人は屋上への扉を開けると、驚愕きょうがくの出来事が待ち受けていた。目の前に巨大な時計が忽然と現れ、その威容いような光景に圧倒された。先ほどまで存在していなかった時計台が雑居ビルの隣に突如として出現していたのだ。


 ミヤビはアンブレラの取手につけていた緋色の珠を取り出し、その珠魂オーブを巨大な時計の文字盤の中心部にはめ込んだ。すると、時計の長針と短針が不思議な光を放ち、次第に形を変えていった。長針と短針はやがて両手杖に、秒針は片手杖へと変化し、二人の前に新たな武器として姿を現した。


 理人は驚きの声を上げた。

「これは... まるでテクノロジーの奇跡だ。」


 ミヤビは片手杖を手に取り、理人に両手杖を手渡しながら言った。

「君はこの“ツインピークスタッフ”両手杖を使って、僕はこの“シングルアークスタッフ”片手杖を使うから、これでヴァンロードを迎撃しましょう。準備はいい?」

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