第4話 闇の誘惑

 その時、ヴァンロードたちは屋上に迫ってきた。赤髪のヴァンロードAI自律型兵士が先頭に立ち、その冷徹な視線でミヤビと理人を睨みつけた。静まり返った空気の中、戦いの幕が切って落とされようとしていた。


 ミヤビと理人は古時計の古代遺産アーティファクトから得た特別な武器を手に取り、覚悟を決めてヴァンロードたちに立ち向かった。彼らの武器は時間と空間を操る力を持ち、これまでにない戦闘の可能性を秘めていた。しかし、出会ったばかりの二人はまだ連携が不完全であり、ヴァンロードたちの熾烈しれつ銃撃じゅうげきに対応するのに手間取ってしまった。


 “短針と長針”(時間)を司るツインピークスタッフ(両手杖)を握りしめる理人は、敵の弾幕をかいくぐるようにして攻撃を試みるものの、未熟な技術では完全には対処できなかった。そのすきをつかれ、一発の銃弾が理人の眼鏡を吹き飛ばした。破片が飛び散り、理人の顔に浴びせる痛みと混乱が、彼の心を乱した。


 その瞬間、理人の内側に潜む邪悪じゃあくな存在が覚醒かくせいし、彼の意識を乗っ取ろうとした。理人は耳元でざわめく声を感じ、頭の中で何かが悪意を持って、そそのかしているように感じた。しかし、彼は強く自分の意志を保とうと必死に抵抗した。


 一方のミヤビは、戦場の状況を把握しながら“秒針”(空間)を司るシングルスタッフ(片手杖)を振るいながら、彼女の瞳は異色の輝きを放ち、周囲の空間が彼女の意思に応じてゆがみ始めた。しかし、理人の窮地がミヤビの注意を分散させ、彼女もまた戦況せんきょうに取り残される寸前だった。


 ヴァンロードたちは再び弾幕を張り巡らせ、ミヤビと理人を包囲しようとしていたが、依然として理人の心は混沌とした闇に包まれていた。邪悪な存在の誘惑が彼の内側で繰り広げられ、理性と闘っていたが、その影響はますます強くなっていた。


 ミヤビは彼の様子に気づき、心配そうに彼の名を呼んだ。


「理人、大丈夫?」


 ミヤビが心配そうに尋ねると、彼は揺れる声でこたえた。


「う、うん…ちょっとだけ、頭が…」


 理人は苦しんだ表情で彼女を見つめたが、その瞳には明らかに混乱が滲んでいた。内なる声が彼を責め立ててきた。


『女にいいところ見せたくないのか?このままでは、母親の時のようにお前のせいで女ともども今度こそだ。弱いところを見せるくらいなら、俺様の力を借りてでも強がってもいいんだぞ、フハハハハ』


 理人の表情がさらに歪み、苦悩が増していく。この邪悪な声に誘惑されるかのように、彼の心は闇に包まれていき、彼の意識は次第に支配されつつあった。


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※追記

 先に『幽愁のモラトリアム』を読まれると、理人の過去の記憶に触れることができ、物語がより一層深まりますのでお勧めします。今後も楽しんでいただけるよう努めて参りますので、どうぞよろしくお願いします!


幽愁のモラトリアム

https://kakuyomu.jp/works/16817330667620181185

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