緋の章

第1話 運命の交差点

 バスから降りると、ミヤビの心にはどこか不穏な気配が漂った。背後に誰かがつけているような感覚が胸をよぎり、彼女は曲がり角に身を隠して待ち構えた。その時、同じバスに乗っていた学生らしき青年が、驚いた表情でミヤビと対面した。


 青年は中肉中背で、端正な顔立ちに眼鏡をかけ、そして、彼の髪はやや長めで、額にかかる前髪が彼の風格を一層引き立てていた。深いブルーの瞳は、冷静と熱情を同居させ、温和な知性がありながらも強い意志を内包しているように見えた。彼の身に纏った服装は、カジュアルながらも洗練されたセンスを感じさせ、白いTシャツに黒のデニムのパンツを着こなしていた。色褪せたバックパックは、彼のキャンパス生活の一端を物語っているようだった。


「なんで後をついてくるの?」とミヤビが問うと、青年は驚いた表情で口を開いた。「バスの中で貴方がご婦人から宝石を盗んだことを見てしまった。そのことが頭から離れなくて気になって、それで…」と告白した。


 ミヤビは深くため息をつき、「君もに迷い込んできたんだね」とぼやくと、青年は少し困惑した表情を浮かべた。


「僕の姿が視えるなんて、君も未亡人と同じで死者に取り憑かれてるのね。」とミヤビが物憂げな表情でつぶやくと、突然に彼女の虹彩異色症ヘテロクロミア・オブ・アイリスの瞳が変わり、周囲に窓が次々と現れ、まるで宇宙の星々のように光を放っていた。ミヤビはその中の一つの窓を開けて、先ほどの未亡人から盗んだ緋色の宝石らしきものをしまい込むと、突如として景色が元の世界に戻った。

 そして、彼女は青年の方に振り返ると、彼女は先ほどまでは持っていなかったアンブレラを握りしめ、その持ち手には先ほどの緋色の石が輝き、非日常的な状況での彼女の強力なパートナーであることを証明するかの如く、アンブレラが荒々しく震えると、彼女の警戒心が一気に強まった。


 ミヤビは慌てて左折する横断歩道を渡ろうとしたが、信号は赤に変わってしまった。彼女は立ち止まり、迫る危険に備えた。

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