視窓のリメイク

悠稀よう子

　喧騒（けんそう）が包み込むバスの中、揺れる世界が私の意識を行ったり来たりさせていた。今日は特別な日だと心が囁（ささや）いていた。バスの窓から漏れるネオンライトが複雑なパターンを映し出し、外の景色はサイバーパンクのように夢幻の輝きを放っていた。

　窓の外には、８番街の新市街（ロスエリア）の摩天楼が光り輝き、デジタル広告の海が一面に広がっていた。それは普段、見慣れた街の風景が今日ばかりは新しい顔を見せているようだった。私はその情景に浸りながら、ふと目の前に座っている少女に目を奪（うば）われた。彼女は、自然なウェーブでしなやかに肩にかかる青みがかった髪と、吸い込まれそうなほど美しい瞳が印象的で、都会的な機能美を思わせるシャープな白のシャツに、褐色のレザージャケットとイエローのフードが一体化した独自のスタイルが彼女の個性的なファッションセンスを物語っていた。そして、何よりもその長く、濃いまつ毛が私の心をくすぐった。それは、まるで夜空を飾る星のように、彼女の金色の瞳を美しく囲んでいた。

　彼女は、隣に座っている喪服を纏（まと）った未亡人と二言三言のやり取りをしていて、未亡人は穏やかな笑顔で彼女に応じ、会話を楽しんでいるようだった。しかし、その会話の中で未亡人は突然、眠りに落ちてしまった。彼女のまつ毛が微かに震える中、彼女は未亡人が眠りに落ちた隙を見て、大胆不敵に彼女のバッグから何かを盗み出した。

　彼女の指先は、静かにバッグの中へと滑り込んだ。その動きは俊敏で、まるで舞い踊る蝶のように優雅だった。彼女の手がバッグから抜き去った瞬間、その中からひときわ輝く物体が姿を現した。それは小さな宝石のように光り輝き、彼女の手に、たやすく収まった。彼女は微笑んでその宝石を見つめ、満足げにバッグにしまった。そして、未亡人の隣に座り、まるで何もなかったかのように振る舞う。

　バスが次の停留所に到着し、新たな乗客が乗り込んでくる中、彼女は静かに立ち上がった。雨がゆっくりと窓ガラスを伝い、その水滴が反射する街の光が彼女のティールブルーの髪にキラキラと輝きを添えている。彼女は降車口付近で立ち、雨に濡れながらも傘を差し、少し遠くを見つめる。その瞬間、後ろを振り返り、私と彼女の目が合う。雨の中でも彼女の冒険心を際立たせ、輝く青い蝶々が舞い飛ぶ中で彼女は微笑んだ。それは新しい始まりへの期待を秘めた、純粋で無邪気な微笑みだった。

　月明かりが彼女のシルエットをほんのりと照らし出し、静かな夜の雨音だけが彼女の足取りを伴奏していた。彼女の心には、新たな挑戦への興奮と未知の世界への好奇心が満ち溢れていた。彼女は運命という無形の力に導かれながら、その一歩一歩が自分自身を再発見する旅であることを感じていた。彼女がどのように自らの運命を切り開いていくのか、今はまだ、その壮大なリメイクの始まりに過ぎなかった。